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それなのに……、
「何、日向さんって、先輩とも喧嘩出来ちゃうの?」
やっぱり、総長ともなると凡人とは価値観が異なるのだろうか。
俺は別に先輩を敬うタイプではない。
しかし、逆らうタイプでもない。
広瀬碧のような自由人は別として、影響力のありそうな先輩に楯突くような冒険はしない。
そんな、古くから続く暗黙の校訓のようなものを無視できるのは、世間知らずか余程の猛者くらいなものだろう。
「緑山くん? えっ? どうしたの? 目付きおかしいよ」
正直羨ましいじゃないか。
上下関係とか、年功序列とか、そんなものとは無縁でいられる強さを持ってる、なんて。
目も据わるってものだ。
「……あ、雨」
ぼやけた視界に銀と緑を捉えたまま、隣に立つ委員長の呟きを聞く。
それから数秒もしないうちに、雨は本降りになった。
窓から頭を出して見物していた奴らはあっという間に散っていき、残った俺と委員長は顔を見合わせる。
「「え゛っ?」」
日向黒が、渡り廊下の方へ走って行くのを見た。
何故か、間宮藍太郎を小脇に抱えて。
中庭にはもう、倒れた二色の不良がいるだけだった。