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愛想よく、
「……何ですか広瀬先輩」
あれ?
思いのほか声に気持ちが入ってねーや。
部活に入ってる訳でも族に入ってる訳でも無い俺は、先輩に対する忠心も何もない。
先輩とは言ってもちょっと疎ましい目の上のたんこぶ的な。
けれどそんな俺の態度も気にした風なく、先輩はクスリと笑った。
「冷たいなー。まぁそこが可愛いんだけどねぇー」
……チャラい。
そして底知れない。
肌は女性みたいに綺麗だし、線は細くて美形。
この人は絶対性格で損をしている。
「可愛いって、男に言うセリフじゃないですよ」
「そう? でもさー、秋ちゃんって顔隠してるし小さいし、ホントに男?」
男子校に通ってるんだから男に決まってるだろう。
「見せる必要ないから隠してるだけなんすケドね。それより何の用ですか?」
「んー、ちょっと頼まれ事してくれる?」