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「……え。何これ」
教室間違えた?
一人残された俺が教室へ行くと、何やら様子がおかしかった。
生徒の大半が外側の窓に集まって騒いでいるのだ。
聞こえてくる内容は、『すげぇ』とか、『やばい』とか、断片的なもの。
外部生だけを集めたDクラスは比較的おとなしい奴が多く、こんな風になるのは珍しい。
それに、三階にあるこの窓からは向かいの芸術棟と中庭くらいしか見えないはずだ。
「……中庭」
あれ?
中庭って、さっき広瀬碧が何か言ってなかったか?
すげぇ。やばい。
どうしよう。
嫌な予感しかしないんだけど。
「あ、緑山くん! ちょっとこっち来て」
入り口に突っ立ったまま異様な空気に萎縮していると、人垣の後方にいた一人が振り返った。
短髪の下の顔は貼り付けたような笑顔。
縁の黒い眼鏡が、若干曇っている。
それなりに上背もあって、一見爽やかな彼は、Dクラスの委員長だ。




