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「つれないなぁー。帽子無しの秋ちゃんなんてレアなのに」
そーだった。
帽子奪われたまんまだ。
妙に視界が明るいと思った。
脱力して、痛む頭を休ませていると、左手を俺の顔の横に着いた広瀬が右手で額に触れてきた。
「ちょっ、何してんですか。やめてください」
そのまま前髪を掻きあげようとするのを、手を掴んで阻止する。
この人たちは遠慮って言葉を知らないんだろうか。
先輩だからって、そんな簡単に他人のおでこ触って良いと思ってんの?
「てめぇらいつまでじゃれてんだ」
「あだっ!!」
ゴツリと鈍い音が響いて、覆い被さっていた体が離れていく。
強烈な拳骨が落ちたらしい。首根っこを掴まれて引き剥がされた広瀬に同情しつつ、俺はゆっくり起き上がった。
「あ、えと、助かりました」
日向にとりあえず頭を下げてお礼を言う。
「…………」
「……?」
ほんの数秒。
無言で見つめられた後、ふいっと目を逸らされた。
え、何故に?




