41/82
12
後頭部が痛い。
ダメだ。
馬鹿になる。
阿呆になる。
俺の脳細胞が、ご臨終。
「先輩……」
「ん?」
「重い。退いて。先輩の所為で馬鹿になる」
「えっ? 何か酷くない?」
のしかかったまま動こうとしない広瀬碧。
周りに人がいないとは言え、図書室前の廊下で、男二人がこの体勢というのは如何なものか。
「酷いのはそっちでしょう? どうして俺の方に来たんですか?」
日向黒なら俺みたいに倒れたりしなかっただろうに。
そう思って至近距離にあるキツネ顔をジロリと睨めば、妙に爽やかな笑顔を返される。
「や、だって、どーせぶつかるなら秋ちゃんのが良かったんだもん」
「退いてください。今すぐに」
意味が分からない。
分かりたくもない。
だもんとか言われても可愛くない。




