39/82
10
「……また、来ます」
気付けばそんなことを言っていた。
馬鹿か俺。
相手は最強不良だぞ。
それなのに、気に入られてちょっと嬉しい、とか。
ホント馬鹿。
離れていった手を追うように日向を見れば、彼は満足気な瞳をしていた。
やっぱり、右目は綺麗な赤だ。
「そういや名前、訊いてなかったな」
「あ。そー、ですね……」
そりゃそーだ。
元々、名乗る気なんてこれっぽっちもなかったんだから。
日向黒なんかに目をつけられでもしたらヤバイなって、そればっかり考えていた。
でも、まぁ。
危険かも知れない相手と関わってみるのも、たまには悪くない。
「俺は二年の日向黒だ」
知ってます。
散々、日向さんって呼んでるでしょーが。
「お前は?」
「えっと、俺は一年の、みど「クローっ!!」……ん?」
意を決して名乗ろうとしていたところを、突然遮られてしまった。




