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「心の声が顔に出てんぞ」
「いでっ!」
呆れたように笑いながら頬を軽くつねられた。
何だ?
ちょっと優しい。
最初の騙し討ちからずっと警戒していたのに、今はあんまり、怖くない。
「あ、あの」
「ん?」
「日向さんってその……」
「なんだよ、歯切れ悪ぃな」
「あ、う……やっぱり良いです」
日向さんって意外とよく笑うんですね。
そう言おうと思ったけれど、やめた。
そんなこと言ってどうするつもりなんだ、俺。
「……お前あんまし、俺のこと恐がるなよ」
小さな呟きの後、白い彼の左手がスッと伸びてきて、俺の頭に乗せられた。
「う、えっ……?」
そのまま、無遠慮に髪をわしゃわしゃと掻き混ぜていく。
「お前は、結構好きだ。だから恐がらずに、また会いに来い」
一瞬かなり焦ったけど、何も言わず、俺はされるがままになった。
人に頭を触られるのは嫌いだ。
けれど、この人の手は思ったより温かくて、乱暴なのに何故だか落ち着いた。




