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「アイツには毎回負けて、パシリにされる。前はコンビニまでプリン買いに走らされた」
「ぷ、プリンっ……!?」
あの人どんだけ怖いもの知らずなの?
学園から一番近いコンビニでも、歩いて二十分はかかるのに。
プリンごときで日向黒を走らせたのか。
寧ろちょっと尊敬しました。
「人を散々振り回しておいてフラフラ逃げる。今日は勝手に知らない奴を寄越してきたから、腹が立ってたんだ」
つまりそれは、やつ当たりですか?
「けど、お前は見たところ人畜無害だしな。族の奴でも無いだろ?」
「……まぁ、はい」
「帰って良し」
「………………」
なんだろう。
何か、釈然としない。
人畜無害は、誉め言葉?
それはともかく、ようやくジュースを奢ってもらうと言うことに同意してくれた。
これで帰れる。
チェス盤を片付けに行った日向黒に続いて、自分も鍵を持って立つ。
ベランダへ出る窓を閉め、他の戸締まりを確認し、
「……何で開けてるんですか?」
閉めたばかりの窓を開ける彼を止めた。




