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「……頭なんか下げなくて良い」
「…………殴ったり、しませんか?」
「するかアホ」
ゆっくり顔を上げると、チェス盤の横に肘を付いた日向黒がニッと笑った。
予想していた冷たい視線では無い、柔らかな笑みに安堵する。
「あの、日向さん?」
「自分で言うのも何だが、滅多に無い機会……なんじゃないのか?」
「そう、ですね」
確かに、総長をパシる機会なんてなかなか無いだろう。
でもまあそれだったら、缶ジュースおごって貰うってのも凄いじゃないか。
だから全然良いんです。
むしろ勿体ない。
そう伝えようとしたのに……。
何故か、最初のようにパーカーの胸ぐらを掴まれた。
そしてそのまま、拒む間も無く引き寄せられ、机に乗り上げるようにして俺は倒れ込む。
「え、うっ、なに?」
慌てて見返せば、日向は変わらず肘をついたままの姿勢で笑っていた。
俺はと言うと、いきなりのことに何の反応も出来ず、あざらしのような腹這い状態。
見ないで。
格好悪いから。