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負けたくないって思いが俺を強くしちゃったのか、ただ単に日向が弱かったのかは知らないが、非常にまずい展開だ。
下手な要求は身を滅ぼす可能性がある。
困るよ日向さん。
喧嘩だけじゃなくその他多才だって言われてるのに、ボードゲームは苦手とか聞いてません。
そんなだから、負けた時の対処法ばかり頭に浮かんで、勝った時のことは何も考えてなかった。
本棚の隙間から見える掛け時計は九時を少し過ぎたところ。
色んなことが起こったはずなのに、まだ全然時間が経っていない。
俺、もう疲れたよ。
「……あの、帰らせてくれるだけで良いんです。それが要求じゃ、ダメですかね?」
「ダメだ。負けは負け、きっちりしないと俺がやなんだよ」
そう言って日向は聞かない。
こういうとこで義理とか、本当にいらない。




