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広瀬と日向1
「あ、ありえない」
ホントありえない。
マジでありえない。
正直ホッとしてるのもありえない。
「あ゛? ひとに勝っといて何だそのツラ。もっと喜べ」
そう、勝ったのだ。
最強不良で族の総長な日向黒に。
「……わ、わーい」
「ふざけるなチビ」
喜べっつったじゃないか。
「で、何だ」
「ななな、何だって、何が」
「報酬だよ。俺にして欲しいことは?」
「ま、待って下さい! もう一戦、いや、もう二戦くらいしましょうよ」
そうだ、あと二戦して、引き分けに持ち込めば良い。
「お前すでに二勝してんだろ」
「うっ……」
先攻後攻入れ換えて二戦した結果、俺の完全勝利。
おかしいな。
俺、チェスは強くないのに。
むしろ弱いのに。
この人それを上回る弱さだったんだけど。




