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とにかく、早く逃げたい。
「……授業は良いけど、お前、広瀬に言われて来たんじゃなかったのか?」
「………………あっ」
「あ゛?」
……そうだよ。
広瀬碧の頼みなんざ知ったことか。
図書室に行くだけで良いとか言ってたし。
なんて、放棄しようと考えてたのに、気になることが一つ出来てしまった。
あの人、此処に日向黒が居ると知ってて、わざと俺を来させたんじゃないのか?
だとしたら、何の為なのか。
「もしかしてお前、何の説明も訊かずに?」
「……来ました。何の、説明も訊かずに」
「本当に、何も? 俺が居ることも知らなかったのか?」
「図書室に行って欲しいって頼まれただけで……後は特に、何も」
「…………」
不機嫌オーラ全開となった日向は、音もなく立ち上がる。
そして、凍るような視線を、なぜか俺に向けた。
赤と黒と銀。
鮮やかなコントラスト。
細められた相貌は猛禽類を思わせる。
もはや死線。
せんぱーい、あんたの所為で嫌いな色が増えそうです。




