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「そんな無防備に泣く奴、初めて見た」
「……ぇ」
無防備?
泣く奴?
無駄に色気のある声で囁かれ、一瞬思考が止まってしまう。
何の話?
「……って、うわっ!?」
呆けていた俺の目元が、乱暴に擦られる。
大きく力強く、けれど喧嘩してる割にゴツゴツしていない綺麗な手。
「痛くて泣くとか、精神年齢いくつだよ」
辛辣な言葉と、優しさの欠片もない力加減。
拭ってくるその手は、もちろん目の前にいる日向黒のもの。
「や、やめっ……!」
目、目がぁっ……目が取れるっ!!
そして恥ずかしい!
恥ずかし過ぎて灰になりたい!!
「じ、自分で拭きます! いや 、すぐに止めてみせます!」
「黙ってろ」
「…………ぐすっ」
マジ怖いよこの人。
良い独裁者になれそうだよ。
それに……。
制服の袖口でごしごしやられちゃって、正直めちゃくちゃ痛いんです。




