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パシりパシられ1
初夏。
雨の前の、ムシムシと暑い憂鬱な朝。
色恋とは無縁の全寮制男子校、木城学園へ通う俺は、いつもどおり登校していた。
男子校のわりに綺麗な寮。二人部屋だがルームメイトは不在。
扉には俺、緑山秋と"赤津イザナ"という名前の入ったプレートがつけられているが、赤津には入学以来一度も会ったことがない。
ゴースト赤津……とか言われているらしい。
そのアダ名つけたやつセンスねぇなーとか思うだろうが、あえて触れないでおこう。
時計を見ればまだ時間に余裕がある。
それでもやることがない俺は、自室を出た。
カバンから黒いキャップを取り出して装着。
ブレザーを無視して着ている、これまた黒いパーカーのフードを被る。
徒歩五分ほどのところにある学園へ、短い桜並木の道を歩いた。