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「まままままっ、マジで止めろ!」
「暴れるな。大人しく俺に"殺られろ"」
俺の抵抗なんて微々たるもので、呆気なく壁に押さえられ、頭一つ高い位置から見下ろされる。
燃えるような深紅の瞳は色のイメージとは違い、冷たい光を放っていた。
怖い。
おかしい。
理不尽だ。
けれど、俺にはどうにもできない。
「……わ、分かりました。殴るなら、殴って下さい」
「……お前」
「は、早くっ!」
じっと赤い瞳に見つめられ、恐怖からか心音が凄いことになっている。
もういっそ、気を失うくらいに一発殴って欲しい。
抵抗を止めた俺の発言が意外だったのか、日向は僅かに目を見開いた。が、すぐにぞっとするような微笑を浮かべる。
「もう、いいのか?」
「か、覚悟を決めました。どーぞ好きなだけ殴って下さい!」
「……じゃあ、遠慮なく」
瞬間、顎をがっちりと掴まれる。
「……っ」
滅多打ちになるのかと思うとやはり怖い。
それでも、後々目を付けられてしまうよりは今殴られて終わらせる方が良いだろう。
そう諦めて、来るであろう衝撃に備えてギュッと目をつむった。




