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薄暗い図書室には本棚が並び、机や椅子も整頓されている。
だが、日向が来る前に壁に空けられた大きな穴が、未だ塞がれていない。
その上、この学園の何処より窓が大きく、西陽が入りやすい。
本の大敵は紫外線、じゃなかったっけ?
まぁ、朝は日が入らないけど。
鍵を近くの机に置いて、さてどうすれば良いんだと歩き出したところで、ベランダに続く窓が一つ開いているのに気付いた。
「誰か、いるのか?」
恐る恐る、近づいてみる。
綿の黄色いカーテンが、風にふわりと揺れた。
「――――誰だ」
突如響いた低い声。
「……えっ?」
それと共に、俺の体は傾いた。




