表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

21/27

第3部 第21章 絶望の大陸、ヴォルガへの上陸

 三王国連合が用意した巨大魔導戦艦「アステリア号」は、どす黒い海を切り裂いて進んでいた。

 目指すは、かつて誰も生きて帰った者がいないとされる魔大陸ヴォルガ。空は常に暗雲に覆われ、海面からは魔力の歪みが霧となって立ち昇っている。


「……うう、気持ち悪い……」


 甲板でリナが手すりにしがみつき、顔を青くしていた。神の使徒といえど、魔大陸特有の「魔力酔い」には抗えない。

 アルスはそんな彼女の横に静かにしゃがみ込み、小さな袋から取り出した干し果実を差し出した。


「リナさん、これを少しずつ噛んでみてください。酸っぱいけど、気分が落ち着くはずです」


「……ありがとう、アルスさん。でも、どうしてそんなものを?」


「あ、さっき厨房の片隅で、たまたまこれを見つけて。なんとなく、リナさんが欲しがる気がしたんです。あと、少し遠くの水平線……あの、一番暗い雲の下あたりをじっと見ていると、三半規管が整いやすいですよ」


 アルスは自然な動作でリナの背中をさすった。彼の指先は、吐き気を和らげるツボを無意識に、しかし的確に刺激している。

 リナの呼吸が次第に深く、穏やかになっていく。


「……不思議。アルスさんに触れられると、魔力の乱れまで整っていくみたい」


「それは、リナさんが頑張り屋さんだからですよ」


 アルスが微笑んだその時、船体が大きく揺れた。

 前方に見えるのは、切り立った断崖絶壁と、そこから放たれる無数の赤い光。魔王軍の迎撃部隊だ。


「全員、戦闘配備! アルス殿、ルナ殿、下がっていてくれ!」


 レオンが叫び、剣を抜く。しかし、アルスは揺れる甲板の上で、一点を凝視していた。

 彼の目には、魔王軍が放つ破壊光線の「軌道」が、幾重もの光の筋となって見えていた。


「レオンさん! 右に三歩、避けてください! ガラムさんは、そのまま真上に放電を!」


アルスの叫びに、二人は反射的に従った。

 次の瞬間、レオンがいた場所を極太の光線が貫き、ガラムが放った電撃が、不可視の状態で接近していた暗殺者の群れを焼き払った。


「……歩いた跡に、敵はなし。今日も絶好調だな、小僧!」


 ガラムが豪快に笑い、戦艦は阿鼻叫喚の海岸線を突破して、ついに魔大陸の土を踏んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ