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《寧々視点》
ネネは、空気を読むのが苦手。
人との距離を測るのも苦手、気を使うのも苦手、愛想笑いも苦手。
色んなことが苦手。できないことが沢山ある。
でもネネは、人と話すのが好き。
ネネの話を聞いてくれるのが好き、人の話を聞くのも好き、同じことを見つけるのも好き、楽しいを共有するのも好き。
なのに、ネネには苦手が多すぎる。
――「ねねちゃん変!」
幼稚園児の頃、友達だと思ってたサァちゃんに言われた。
ネネは普通に話してるつもりなのに、普通に遊んでるつもりなのに、なんでかそんなことを言われる。
ただ楽しくおしゃべりしたいだけなのに、ネネの好きなことをすると変だと言われた。
――「酷いよ寧々! なんでそんなこと言うのっ!」
小学生の頃、友達だと思ってたリィちゃんに言われた。
思ったことを口にしただけだった。それを酷いと言われた。
周りの友達と思ってた子たちからも言われた。酷いと、気を使ってと、空気を読んでと。
よくわかんない。何が酷いの? 気を使うってどうやって? 空気読むって何?
――「寧々ってキモくない? 流石にベタベタしすぎって感じ」
中学生の頃、友達だと思ってたツゥちゃんに言われた。
スキンシップしただけなのに、そんな陰口を叩かれた。
友達と触れ合っちゃうのがそんなに悪いこと? 友達だから触りたい。スキンシップだって取りたい。それってそんなに悪いの?
わかんないことだらけ。分かり合えないことだらけ。
そんな中でわかった。ネネは他人と『違う』んだ。
色んなことが苦手で、思うことも感じることも違う。だからわからないことばっかりなんだ。
ネネはどれにも噛み合わないパズルのピースだ。
噛み合わないピース同士でくっつくと、必ず外れる。
だから一つだけ。ネネのピースは二つにならない。ずっと一人ぼっち。寂しい一人きり。噛み合うピースが、見当たらないから。
それに気がついたのは高校生になった時だった。
そして同時に『お仕事』を知った。
キッカケはSNSだった。ネネみたいに一人ぼっちで寂しい女の子ができる『お仕事』。それがパパ活だった。
Hなことをする人もいるけど、そうじゃない人もたくさんいる。
ネネも始めた。高校一年生の頃だった。
大人の男の人っていうのは、今まで友達だと思ってた同年代の女の子とは違う生き物だ。
話し方も、仕草も、表情も、女の子とは違う。
そして、ネネも『違う』。普通の女の子とは違う。
お話をしたら笑ってくれる、思ったことを口にしても怒らない、スキンシップをしたら喜んでくれる。
もちろん会った人全員がそうだったわけじゃない。それでも合う人はいた。少なくない数いた。
それで知った。ネネと大人の男の人は、『合う』のだと。
けど残念なのが、大人の男の人とは友達って感じじゃないこと。
会うのが『お仕事』だからなのかな。よくわかんない。けど友達とはちょっと違う。
だけどそれでいい。それでもいい。だって大人の男の人と話してる時、ネネは一人ぼっちじゃない。
大人の男の人と話してる時は、寂しいのを忘れられる。それで十分。ネネは『お仕事』に向いてるんだ。こういうの天職っていうんだよね?
ネネは一人を忘れられるなら、それでいいかなって思ってた。
――「さっきはありがとう、寧々」
そんな時だった。ムゥちゃんと出会ったのは。
高校二年で編入してきたおっぱいの大きい女の子。
ネネと喋ってもいいよって言ってくれた。思ったことたくさん口にしたけど何も言われない。おっぱい触っても怒られなかった。
この子は他の子と違う。ネネと同じ『違う』だ。
そう思ってから、とってもワクワクした。お話するのが楽しみで、スキンシップが嬉しくて、たくさん一緒に居たいと思えた。
ワクワクってことは、ネネは期待してたんだと思う。
ようやく、パズルのピースが埋まる。
一つだけじゃなくて、二つのピースになれる。
噛み合うピース、外れることのないピース。ようやく、見つかったと思った。
――「今すぐそれやめろ」
だからこそ、期待が裏切られるのは辛かった。
なんで、なんでそんな酷いこと言うの?
ネネはただ『合う』人とお話してるだけなのに。『お仕事』してるだけなのに。なんでそんな怒った顔するの?
違ったの? 結局、ムゥちゃんも違ったの? サァちゃんとリィちゃんとツゥちゃんと同じで、ネネとは違うの?
友達じゃなくて、ネネが友達だと思ってただけなの?
たくさん傷ついた。傷つけられた。
酷い。酷いよ。なんで傷つけるの。
ネネはただ、友達になりたかっただけなのに。




