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人魚へ送る魔女のギフトボックス

作者: 灰根さやか
掲載日:2025/12/08

 人跡未踏の深海に人魚が住む世界。

 人魚の国の姫セレンは、生まれつき日光にあたると体が焼ける体質だった。

 他の人魚たちは昼間も魚たちと泳いだり、海面に顔を出して地上の世界を見ているのに、セレンはずっとそれが出来ずにいた。

 けれどもセレンはそれでもよかった。深海と同じ深い群青色の空に浮かぶ月を見ることが、何よりも好きだったからだ。セレンは昼の地上を見たいと思わなかった。


 セレンは、人魚の国にあるお城に父親と母親と一緒に住んでいる。

 お城には他にもメイドの人魚が五人。そして不思議な魔道具を作る魔女の人魚がいた。

 セレンは魔女ととても親しかった。一人娘のセレンにとって、魔女は姉のような存在だった。

 ある日そんな魔女と一緒に、セレンはお月見に行こうと城を出た。

 二人が海面を目指して泳いでいると、突然人間の青年が海に飛び込んできた。

 人間は意識を失っているようで、固く目を閉じている。さらに近くには沈没しそうな船があった。どうやら地上は大嵐のようだ。

 セレンは最初に落ちてきた人間を抱えて、砂浜を目指した。息が出来るように時折海面に顔を出しながら、必死で泳ぐ。

 初めて会った人間を助けようとするセレンを、魔女は理解できなかった。

 けれども嵐が収まり月の光がセレンを照らした時、魔女はセレンが人間を助けた理由を知った。セレンは恋する乙女の顔をしていたのだ。


 その日以降、セレンは浮かない表情をしていることが多くなった。

 あの人間に会いたい、私を人間にしてくれと魔女に頼んだら、「人間には出来るが日光に当たれない体質を変えることは出来ない」と言われてしまったのだ。

 セレンは生まれて初めて自分の体質を憎んだ。そして絶望した。

 そんなセレンを、魔女はとても心が痛む思いで見つめていた。

 なんとか彼女が望む通り、あの人間に会わせてあげられないか。もはや手段は選ばない。

 考えに考えた魔女は、一つの方法を思いついた。

 自身が持つ魔法のギフトボックスを使うことだ。


 やがてセレンの誕生日が訪れた。

 魔女はセレンに誕生日プレゼントとして、自身の体ほどの大きさがあるギフトボックスを差し出した。

 セレンがそれを開けると、中からあの人間と同じ見た目をした人魚が出てきた。

 魔女のギフトボックスに人間を入れると、その者は人魚に変化する。

 人魚が人間になれないなら、人間を人魚にすればいい。魔女はそう言った。

 セレンは泣いて喜んだ。

読んでくださりありがとうございます。

『第7回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞』に応募します。

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― 新着の感想 ―
この発想はなかったー!! 面白かったです! 人魚モノ好きなのですが、魔女が味方で、ギフトボックスの使い方が秀逸と敬服しました。読ませていただき、ありがとうございました♪
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