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吸血鬼(ヴァンパイア) その②

 ハインリヒの《極大火球(ギガファイアボール)》と、エルガーの《地獄火球(ヘルファイアボール)》。

 そしてバルトの魔銃《七発六中(フライクーゲル)》による《業火(インフェルノ)》と《浄化(クレンズ)》、《除霊(エクスペル)》。


 それらが吸血鬼(ヴァンパイア)に直撃する。


     *


 激しい爆発が起こり、光と熱の奔流が渦巻き、暴風が荒れ狂う。魔力の粒子が周囲に飛散する。


 吸血鬼(ヴァンパイア)の腰かけていた粗末な椅子とテーブル、その上のカップが爆発に巻き込まれ、バラバラに砕けて散乱する。部屋の奥で、牢獄の中に閉じ込められている盗賊どものものと思われる、汚い悲鳴があがった。


 煙が()()()()と立ち込める。ハインリヒとエルガーは()()を抜いて左右から警戒する。

 例によって魔銃の反動で後ろに転がっていたバルトは、《七発六中(フライクーゲル)》に魔弾を込め、部屋の外から吸血鬼(ヴァンパイア)に狙いをつけた。


     *


「――!!」


 ハインリヒが《障壁(バリア)》を展開、煙の中から襲い来たる吸血鬼(ヴァンパイア)の攻撃を防ぐ。防御の魔法陣がハインリヒと吸血鬼(ヴァンパイア)の間に展開、黒く長い爪の一撃を受け止めた。


「チッ!!」


 空中で《障壁(バリア)》と()っていた吸血鬼(ヴァンパイア)は、舌打ちをして後ろに飛びすさる。


――()()()抵抗(レジスト)してやがる。ってことは、

――「()()()()()()()」という選択肢になるな。


 ハインリヒとエルガーが《念話(テレパシー)》で交信する。


 吸血鬼(ヴァンパイア)は宙でくるくると回転し、着地。その姿を、桜花騎士団(キルシュリッター)の三人が見やる。

 その姿は、皮膚や髪や衣服にも、少しもダメージが見当たらなかった。


     *


 肌は不自然に白く、瞳は鮮血のように(あか)い。亜麻色の髪は首のあたりまでの長さで、両サイドが編み込まれている。耳の先がわずかに尖っている。


 黒い外套(マント)はなめらかな光沢のある生地で、襟が高く立っている。いかにも吸血鬼然とした装備だ。

 見た目は脆弱そうな外套(マント)だが、刃や魔法が通るかはわからない。襟を立てているのは()()()()()()()()()()()()だろう。

 そしてその下には、体の線が見える暗い色の布の服を着ている。若干古風なデザインだった。


 胸の部分のふくらみから、女性――いや、()()()()()()()()()()()であることがわかる。

 両手の爪は真っ黒で、長く伸び、尖っている。わずかに笑みを浮かべた唇の端からは、鋭い牙が見える。


 年の頃は、()()()()()()()()()()()()()()十六歳ほどに見える。だが、その不敵な(かお)が年齢の推測を困難にさせている。

 見かけ上の若さの印象を裏切り、手は筋張っており、指が長く細い。


 紅い瞳や爪や牙以上に、全体に()()()()()()()()()()()()()()()()さがある。それが、この()()()()()()()()()()()()()()()()()ことを示している。

 そもそも()()()()()()()()()のだ。


     *


「ずいぶんな()()()じゃないの。せっかく私が()()()にものごとを解決しようとしてるっていうのに」


 傲岸な表情を浮かべ、見下すような視線で吸血鬼(ヴァンパイア)が抗議の言葉を口にした。長く飛び出た両手の爪が、付け爪(ネイル)でもしているくらいの長さまで引っ込む。


()()だと? なに言ってやがる」


 エルガーが思わず反論する。


()()()()()()あの食屍鬼(グール)をけしかけ、操って俺らを襲わせたんだろうが」


 あの異常なまでに硬く力の強い食屍鬼(グール)のせいで、桜花騎士団(キルシュリッター)は危うく全滅の憂き目を見た。エルガーは側頭部に曲剣を水平に構える。

 暗黒系神官戦士の当然の反論を、吸血鬼(ヴァンパイア)は「あっは」と(わら)った。


「面白い冗談を言うじゃない。()()()()()は自分らと()()()が対等だとでも思っているみたい()()()()、」


 吸血鬼(ヴァンパイア)は「ハッ」と嗤う。


「それは間違い。吸血鬼(ヴァンパイア)と人間はそもそも対等でない。私が人間だとしたら、()()()()()は家畜や鶏みたいなもの。そのくらいの()()()がある。わかるでしょ?」


――ずいぶん()()だな。吸血鬼(ヴァンパイア)ッてのは皆()()なのか?

――()()()の言う通り、()()()吸血鬼(ヴァンパイア)では個体同士の力の差は圧倒的だ。だから()()()()態度になる。

――()()だと思って余裕こいてやがるわけだな。

――ああ。つまり()()()()()()()


 吸血鬼(ヴァンパイア)が喋っている間に、ハインリヒとエルガーは《念話(テレパシー)》で会話する。


     *


「……だから、あの不死鬼(ノスフェラトゥ)退(しりぞ)けられるくらいでなければ、()()()()()()()()()()()()ってわけ」

「なるほど、あの食屍鬼(グール)、いや不死鬼(ノスフェラトゥ)か。あれは()()だったわけだな。我々の力を()()ための」

「その通り。()()()()()、そこの()()は物分かりがいいのね」


 短躯を揶揄されたハインリヒの顔がスッと無表情になる。

 吸血鬼(ヴァンパイア)はそれを目ざとく察して唇の端を歪め、エルガーはリーダーの顔をちらりと(うかが)った。


「……そして我々は、()()()()それを突破(クリア)し、めでたく貴様と()()()()()()()()()()()わけだ」


 ()()()()と間合いを計りながら、ハインリヒが言う。その声には、いかにも苛立たしげな雰囲気があった。


「そう。感謝しなさいよね」


 剣を構えてにじり寄る桜花騎士団(キルシュリッター)の二人を、さしたる脅威とも思っていない様子で吸血鬼(ヴァンパイア)は見比べ、侮蔑的な笑みを浮かべる。口元の牙がきらりと光った。


     *


 部屋の天井にぶら下がった眼蝙蝠(アイ・バット)が、小さな体の中央にある巨大な一つ目を()()()()と動かし、冒険者と魔物(モンスター)の戦いを見守る。

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