第八章 夜明けの誓い
裁きの場を経て、噂が広まる王宮。
リシェルとカティアはついに唇を重ね、互いの想いを確かめ合う。
だがその裏で宰相は隣国の王子に密告し、二人の関係を利用して国を揺さぶろうと企む。
やがて隣国軍が国境に迫り、二人は「恋」と「国」を同時に背負わされる運命に直面する。
裁きの場での一件は、王宮中に瞬く間に広まった。
「姫が近衛騎士をかばったらしい」
「いや、あれは……もっと深い関係ではないか」
囁きは噂となり、噂は風に乗って城下にも届いていった。
リシェルは重たい空気の中、自室に閉じこもっていた。
父王は沈黙を貫き、宰相は不気味に笑みを浮かべている。
彼女にとって唯一の救いは――夜になるとカティアが必ず会いに来てくれることだった。
「姫様」
窓から忍び込んだ騎士の影。
リシェルは涙をこぼしながら、彼女を抱きしめた。
「初めて宰相に口答えしちゃったわね。でも、どうなってもいいと思ったの......あなたを失うくらいなら」
その言葉に、カティアの胸は強く打ち鳴らされる。
「私も......もう抑えられません」
頬に触れた指先は、震えていた。
二人の唇が触れ合い、時間が止まる。
――初めて交わす口づけ。
それは幼い日の約束を果たすように甘く、そして切なかった。
「姫様、私は必ずあなたを守ります」
「いいえ、守らなくてもいいの......ただ一緒にいるだけで、私はそれで」
月明かりの下で交わした誓いは、誰にも知られてはいけない秘密の契り。
だがその陰で、宰相はすでに動き始めていた。
「隣国の王子に報せろ。姫は騎士と結託し、王国を危うくしていると」
冷酷な声が夜の廊下に響く。
そして数日後。
国境に、隣国の軍勢が動き始めたとの報せが届いた。




