第七章 裁きの庭
裁きの場に引き出されたカティアは、不敬を問われる。
宰相は彼女を左遷しようと画策するが、リシェルは人前で「彼女は唯一の騎士」と宣言。
公の場での告白にも等しいその言葉は、二人の絆を強固にすると同時に、王国全体を揺さぶる火種となるのだった。
翌日、王宮の広間には重苦しい空気が漂っていた。
廷臣たちがずらりと並び、中央に立たされるのはカティア。
その横に王座にいるリシェルの父、王は、厳しい目で彼女を見下ろしていた。
「近衛騎士カティア。姫に不敬を働いたとの報告がある」
低く響く声が広間を満たす。
カティアは膝をつき、静かに頭を垂れた。
「私は……姫様を護ることしかしておりません」
その言葉にリシェルは立ち上がる。
「父上! それは誤解です! カティアは忠実に仕えてくれました!」
だが宰相が冷たい声で遮った。
「姫様。衛兵が目撃しているのです。夜更けに二人きりで密会など、不敬の極み」
ざわめく廷臣たち。
リシェルは胸の奥で怒りを燃やした。
――宰相は私たちを引き裂こうとしている。
「ならば!」
リシェルは声を張った。
「ならば、カティアの潔白を証明するのは私です!彼女は、昨日私の話しを聞いてくれていただけ。」
王は眉をひそめ、しばし沈黙した。
その間に、宰相が低く囁く。
「陛下、このままでは姫様の評判が傷つきます。カティア殿を遠方へ左遷すれば、丸く収まりましょう」
リシェルの胸が凍りついた。
遠方へ――?もう二度と会えなくなってしまうではないか。
「そんなの、嫌……!」
思わずこぼした言葉に、広間が静まり返る。
王は娘を見つめ、深く息を吐いた。
「リシェル。お前がそこまで申すならば......若き騎士よ、お主はどうお思っているのだ?今すぐ答えよ」
広間に集う人々が固唾をのむ。
「カティア——」
王女リシェルは立ち上がり、まっすぐにカティアを見据えた。
「私は彼女のたった一人の騎士です!命を懸けて護る義務があります。」
その宣言に、広間が揺れた。
王も宰相もしょうがない、といった様子で首を縦に振った。
義務——
嫌でもその言葉が頭に残る。
カティアは自分を守ってくれているだけなんだという現実を突きつけられた。
――二人の運命は、もう後戻りできない場所へ進み始めていた。




