第六章 密告
宰相の差し金で、カティアとリシェルの密会は「不敬」として告発される。
カティアは地下牢に捕らわれ、リシェルは危険を冒して彼女を訪ねる。
互いの想いを確かめ合う二人だったが、衛兵の接近によって再び引き裂かれようとしていた。
訓練場の影に潜んでいたのは、若い侍従だった。
宰相の手先として動いていた男は、リシェルとカティアの姿を目にし、慌ただしくその場を立ち去った。
翌朝、王宮に不穏な空気が漂う。
「近衛騎士カティア――姫様に対して不敬の振る舞いがあったと報告を受けました」
宰相の声は広間に響き渡った。
その場にいた廷臣たちはざわめき、視線がカティアに注がれる。
リシェルの胸は冷たく凍りついた。
「そんな……! 彼女は私に忠実に仕えてくれているだけです!」
必死に弁護するリシェルの声も、宰相は淡々と押し返す。
「では調査を。潔白であれば問題はないはずです」
――調査。つまり監視、拘束。
リシェルは奥歯を噛み、拳を握りしめた。
その夜。
カティアは地下の兵舎に閉じ込められていた。
鉄格子の向こうで、彼女は静かに目を閉じる。
「これでいい。姫様に迷惑をかけずに済むなら……」
だが、リシェルは諦めていなかった。
「カティアは奪わせない」
密かに、侍女に変装し地下へ向かう。
牢にたどり着いたとき、カティアは驚きに目を見開いた。
「姫様、なぜここに……!」
「あなたを閉じ込めるなんて、許せない!」
震える手で鉄格子を握るリシェルに、カティアは微笑んだ。
「大丈夫です。必ず戻ります。だから……泣かないで」
しかし、扉の向こうから足音が響いた。
衛兵の松明の灯りが、二人の影を映し出す。
「姫様!!お逃げください!」
カティアの叫びが地下に反響する。




