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第三章 揺れる心

リシェルの孤独と政略結婚への悩みを知り、カティアの心は揺れる。

夜、扉越しにリシェルの声を聞きながらも踏み込めない自分。

翌朝、庭園で交わした「騎士と姫」の言葉は、互いの想いをさらに複雑に絡めていく。

夜の回廊は静まり返り、灯された燭台が壁に揺らめく影を落としていた。

カティアは巡回の任を終え、ふと足を止める。

ここは幼い頃、リシェルと二人でよく駆け回った廊下だ。今は冷たく広い石の道に過ぎない。


「昔みたいに、笑いながら手を取れたら......」

口に出してしまいそうな弱音を、カティアはすぐに呑み込んだ。

騎士は己の心を殺してこそ――そう教えられてきた。


だが、扉の向こうから聞こえるリシェルの声が、その誓いを揺るがす。

「宰相の言う通りに嫁ぐなんて、私には......」

リシェルの独り言は、夜の闇に紛れるようにかすかだった。

カティアは思わず扉に手をかける。

だが開けてはいけない、と理性が制した。

姫の心に踏み込むことは、騎士としての一線を越えることだから。


それでも――

リシェルの孤独を思うと、胸が張り裂けそうになる。

「私は……騎士だから」

カティアは低くつぶやき、手を引っ込めた。


翌朝。

庭園で花を摘むリシェルの姿に、カティアは息を呑む。

かつて共に遊んだ庭園。今は厳重に守られた場所だ。

「姫様、護衛もつけずに......私を呼んでくだされば」

「大丈夫よ。ここだけは、私の居場所だから」

そう言って微笑むリシェルの横顔は、どこか翳りを帯びていた。

そして、その花を差し出しながら小さく囁いた。

「ねえ……あなたは、私を“姫”としてしか見ないの?」

不意の問いに、カティアの胸が熱を帯びる。

答えたい。けれど答えてはいけない。

「……私は、あなたの騎士です」

それだけを告げて、カティアは視線を逸らした。

リシェルの微笑みは淡く揺れ、やがて風に散る花びらと共に消えていった。

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