第二章 閉ざされた城
王宮という「檻」の中で、王女リシェルと近衛騎士カティアは再会する。
幼き日の記憶を胸に抱きつつも、二人は姫と騎士としての立場を守らざるを得ない。
閉ざされた城での再会は、甘く切ない緊張を孕んだ幕開けとなる。
リシェルは王宮の高い窓辺に立ち、外を見下ろしていた。青い空の下で、街は穏やかに息づいている。
だが、城の中はまるで檻のようだった。
姫という立場にある彼女は、政略結婚や王位継承の重圧に縛られ、自由に外へ出ることすら許されない。
「姫様」
背後から、静かな声が響いた。
振り返れば、そこに立っていたのはカティア。白銀の鎧に身を包み、剣を腰に携える彼女は、もう昔の遊び仲間ではない。王国のために身を捧げる近衛騎士だ。
「カティア……」
久しぶりに名前を呼んだ瞬間、リシェルの胸は甘く締めつけられる。
けれど、彼女は笑顔を作り、姫らしく振る舞った。
「私を守るために、戻ってきてくれたのね」
「はい。この命に代えても」
短い言葉。それ以上は交わせない。
カティアの視線は真っ直ぐで、忠誠を誓う騎士そのものだった。
――幼い頃、二人で秘密の庭園に忍び込み、「ずっと一緒にいる」と約束したこと。
――花びらの舞う中で、小さな指と指を結んだあの日の記憶。
それらは、誰にも話せない秘密の宝物のように胸にしまわれている。
リシェルは小さく拳を握った。
「……閉じ込められたこの城が、もし私を壊そうとしても。あなたがいてくれるなら、私は――」
だがその声は、喉の奥で途切れた。
扉の向こうから、宰相の冷たい声が響いたからだ。
「姫様、次の政務のお時間です」
リシェルは再び仮面をかぶり、毅然と扉へと歩み出す。
カティアは無言でその背を追った。
互いの想いを隠したまま――城という檻の中で、二人の物語が始まろうとしていた。




