第十二章 暁に咲く二輪
戦後、国は平和を取り戻すが、宰相の陰謀が明らかになり裁きが下される。
リシェルは王位に就くも、形式よりも「共に生きる未来」を選ぶ。
カティアとの絆を再び誓い合い、二人は王国の“新たな夜明け”の象徴となる。
物語は、白い花が舞う暁の庭で幕を閉じる。
戦の終焉から数日。
城下は静けさを取り戻し、焦げた空気の中にようやく春の風が吹き始めていた。
リシェルは城の庭で、満開の白い花を見つめていた。
その隣には、包帯を巻いたカティアが立っている。
「……傷は、もう大丈夫?」
「はい。姫様の薬草茶が効いたのかもしれませんね」
「それは良かった。だって、これからも隣にいてもらわなきゃ困るもの」
カティアはその言葉に少しだけ頬を赤らめ、視線をそらした。
けれどその瞳は、どこまでも穏やかだった。
そこへ、国王が現れる。
戦の後、彼は全てを知った――宰相の裏切り、そしてリシェルの勇気。
「リシェル。お前はよくやった。……それに、そなたの選んだ騎士にも感謝を」
王は膝をつくカティアに近づき、静かに言った。
「国を救ったのは、そなたらの絆だ。もはや誰も、それを否定することはできぬ」
「陛下、顔を上げてくださいっ!私は護衛騎士として当然のことをしたまでです」
その日、宰相は処刑された。
だが、リシェルは彼の最期を見届けず、ただ静かに祈りを捧げた。
「憎しみではなく、未来で終わりにしたいの」
そして季節は巡り、戴冠の日が訪れる。
城中が白い花で飾られ、民が笑顔で見上げる中、リシェルは王冠を戴いた。
だが、戴冠式のあと――彼女は王座に座ることを選ばなかった。
「私は、この国の“女王”ではなく、“導き手”でいたい」
そう言って王冠を抱え、カティアのほうを見た。
「私の隣に、あなたがいない未来は考えられない。……だから、これからも共に歩んでくれる?」
カティアは目を見開き、静かに跪く。
「あなたのために剣を振るい、あなたの笑顔のために生きることを、もう一度ここに誓います」
リシェルが微笑む。
朝の光が二人を包み、白い花びらが風に舞った。
それはまるで、暁に咲く二輪の花――
誰にも摘まれることのない、永遠の誓いの証だった。




