第十章 炎の戦場
隣国が侵攻を開始し、ついに戦争が勃発する。
リシェルは兵士たちと共に戦場に立ち、カティアは彼女を守って剣を振るう。
宰相の策略により劣勢に追い込まれるが、リシェルの声は兵の心を奮い立たせる。
戦場に現れた隣国王子とカティアの一騎打ちが始まり、物語は一気に緊迫を増していく。
暁の空を赤く染め、隣国の軍勢が国境を越えて押し寄せた。
地鳴りのような太鼓と鬨の声が大地を揺らす。
城の前に立つリシェルは、王女の装束に鎧を重ねていた。
「姫様、どうか城へお下がりを!」
兵士たちは叫ぶが、リシェルは微笑みを浮かべて首を振った。
「私は国の民を見捨てません。……カティアが、隣で剣を取ってくれるから」
その言葉にカティアの心臓が熱く打つ。
「必ず、お守りします」
剣を抜く音が響き、近衛騎士たちが次々と姫の周囲に集う。
戦の幕が切って落とされた。
火矢が空を裂き、地上は瞬く間に炎と叫びで覆われる。
カティアは先陣を切り、剣の軌跡で敵兵を薙ぎ払う。
背後にはリシェルが立ち、傷ついた兵を癒やし、声で鼓舞していた。
「負けないで! 私たちの国を守るのよ!」
その声に兵士たちは奮い立ち、押され気味だった陣を盛り返す。
だが戦況は過酷だった。
宰相が意図的に援軍を遅らせたせいで、兵数は劣勢。
さらに敵の中には、王子本人が姿を現していた。
「リシェル姫! その命、私が奪い、隣国の妃として迎えてやろう!」
王子は狂気じみた笑みで剣を振るう。
その刃がリシェルへ迫った瞬間――カティアの剣がそれを受け止めた。
「姫様に指一本触れさせない!」
火花が散り、二人の戦いが戦場の中央で始まる。
その姿を見てリシェルは震える手を握りしめ、声を張り上げた。
「カティア! あなたは一人じゃない! 私がいる!」
その声に背を押されるように、カティアは一歩、また一歩と王子を押し返していく。
だが戦場の炎は容赦なく広がり、二人の運命もまた炎に包まれようとしていた――。




