第九章 戦の足音
隣国軍の圧力により、王はリシェルに縁談を強制しようとするが、リシェルは拒否。
カティアもまた戦に備える中で、自らの立場と想いに葛藤する。
宰相は兵たちに不信を広め、二人を孤立させようとする。
それでもリシェルとカティアは「共に国を守る」と誓い合う。
だが戦はすでに避けられぬものとして迫りつつあった――。
国境に隣国の軍が集結している――。
その報せは、王宮に冷たい緊張をもたらした。
戦を避けたい国王は、宰相の進言に従い「隣国王子との縁談」を再び持ち出す。
「リシェル。国を守るために、お前は身を捧げねばならぬ」
父王の声は固く、娘を案じながらも国を背負う王の顔をしていた。
だがリシェルは静かに首を振った。
「私は……心を裏切ってまで王冠を守りたくはありません」
その決意は、幼い姫のわがままではなかった。
カティアと過ごした夜を経て、彼女の瞳には強さが宿っていた。
一方、カティアは近衛騎士として、戦の準備に追われていた。
剣を磨くたび、心は揺れる。
「戦えば、姫様を守れる。けれど……血で染まった未来を、彼女に見せたくはない」
宰相はその隙を突き、兵たちに密かに囁いた。
「姫は騎士に惑わされ、国を売ろうとしている」
不穏な噂は兵の士気を乱し、カティアの立場を追い詰めていく。
そんな中、リシェルは彼女を呼び寄せた。 「カティア、お願い。戦を避ける道を一緒に探してほしい」
「姫様……戦を止めるには、私たち自身が立ち上がらなければ」
二人の視線が重なる。
愛と責務、どちらも捨てられない。
ならば――共に背負うしかない。
夜、月下の庭園で彼女たちは再び誓いを交わす。
「私たちは国を守る。ふたりで」
その声は確かに重なり合い、夜風に乗って遠くへと広がっていった。
しかし、すでに隣国軍は進軍を開始していた。
戦の足音が、大地を揺らして迫り来る――。




