ねこの後ろ頭、テカテカ!
うちの猫は、非常に触り心地がいい。
もふもふの、ふくふくの、うふんうふんな感じの毛並みがたまらない。
ほんのりポカポカしてて、すべすべしてて、つい撫で倒したくなること必至だ。
たまにバチッとする時もあるけれど…、手のひらに極上の至福をもたらすことが約束された、魅惑の花園、楽園、癒しの泉そのものなのである!!
ついつい触ってしまうからなのか、猫はやけにつやつやとしている。
頭、背中、しっぽ、前足の甲…、イラストにしたらハイライトを入れなければ気が済まないレベルで光沢を纏っているのだ。
おそらく、飼い主である私が四六時中撫でているから…毛先が整っているのだろう。
たぶん、飼い主である私が皮脂にまみれた手のひらで撫でているから…コーティングされているのだろう。
おなかのあたりは、右手の五本の指をおっぴろげてやわ毛をわしゃわしゃやることが多いからか、やや光沢に欠けている。
猫たちの艶めくボディの中で一番美しく光沢を放っているのは頭部、特に…、後頭部のあたりだ。
ガサツで大胆でおおらかで大げさなタイプである私は、指先でチョコチョコ撫でるよりも手のひら全体を使ってガッツリ愛でたいタイプである。
頭頂部は面積が狭く、せせこましく撫でなければいけないという制約があるので、猫耳のあたりからザブッとなでおろすような感じで撫でることが多い。そのためか、後頭部全体がやけにつやつやとしている。
私が後ろ頭をなでると、猫は目を細めてグルグルとのどを鳴らす。
ぐいぐいと頭を手のひらに押し付けてくるような、強気の猫もいる。
てのひらを頭上に持っていくだけで、猫の耳がぺたんと折られて…撫でられる気満々になるのが何とも愛おしい。…もしかしたら、被害を最小限にするために自衛しているのかもしれないけれども。
…ふとした時に思うのは、うちの猫たちは、いつまでつやつやしているのだろうかという事だ。
昔、お隣に住んでいたおばあちゃんが飼っていた猫は…、真っ白でフクフクの、貫禄がある猫だった。
いつも膝の上で丸くなってて、しょっちゅう頭や背中を撫でられていたような気がするけれども…、つやつやしていたという印象はない。おばあちゃんの猫は一匹だったから、かなり相当撫でられていたはずなのだけれども…。
あれは、おばあちゃんの手で撫でたくらいでは微塵も影響されないレベルの屈強な毛を携えた猫だったのか?
それとも、おばあちゃんの手のひらに脂が無いから、磨かれなかっただけなのか?
……おばあちゃんの手のひらは、つるんつるんのテカテカだった。
あれはもしや、猫の毛で磨かれて輝いていたのではあるまいか。
猫の毛に蓄えられた脂で、光沢を賜っていたのではあるまいか。
猫を撫ですぎて指紋や手相が削れてしまったと笑っていたが…、私もいずれ、そうなるのかもしれないな……。
なんという、猫の毛と人の手のひらのパワーバランス。
私のべたつく手のひらが干上がれば…、やがて猫に脂を恵んでもらう事になるに違いない。
……少しでも長く、手のひらに脂を蓄えておかねばなるまい。
私は、施しを受けるより施したい、お節介なタイプなのだ。
そうだな、いずれ来る日々のために…、努力はしておくべきだな。
すとんと腑に落ちた私は、己の身に脂を蓄えるべく、焼き立てパンのお店に向かったのだった。