妹への恋 -捻じ曲がった恋- 「2」
「なぁ亜優? お前彼氏作らないの?」
本当に平静を装いながら聞いてみた。
心臓は凄い鼓動だが……
「彼氏? ……お兄ちゃんは彼女出来たの?」
お前の事、妹としてではなく女として好きなんだ!
頼む、彼女になってくれぇぇぇ!!!
と心で叫びながら……
「俺は居ないけど…… ほら、亜優もてるだろ?」
「ん~ どうだろうね?」
なんと曖昧な答えなんだ…
俺は核心に迫ろうと勇樹を出し聞いた。
「そしたら…… 好きな奴はどうなんだ? 居るのか?」
「うん、居るよ?」
………………
え? 今なんと言った?
好きな奴が居るのか?!
……しかし、よく考えればおかしくは無い事だ。
亜優も年頃の女、好きな人の一人や二人は仕方が無い……
そう思わないと、これからの一週間の計画が水の泡になってしまう!
しかし、亜優が好きな人って…… 誰なんだ?
俺の可愛い亜優が思いを寄せる生意気なヤローはっ!
「へぇ~ 誰なんだよ?」
「ん? お兄ちゃん」
心臓がヤバイ位に早い。
「お…俺? 亜優が好きな人って……」
完全に動揺してる……。
それを知ったか知らないか、亜優が俺を見つめた。
「私… お兄ちゃんが好きなんだ… 兄弟なのに……」
多分、今の俺の顔を鏡で見たら、だるまみたいに顔が赤く目が見開いてるに違いない。
「え…………?」
ようやく口に出せた言葉は、一言しかなかった。
「いけない関係だって言うのは判ってる…… でももう自分に嘘は嫌なの……」
いきなりの急展開に頭が真っ白になっていく
胸が痛い。 胸が苦しい。
俺達はお互い思い合っていたのか?
亜優は彼氏も作らず、俺への恋心を胸に秘めていたのか?
しばらくの沈黙。
お互い、目を見詰め合ったまま、静かに時が流れている。
そして、俺は思い切って口を開いた。
「お、俺も………」
「あっはっはっはっはっはっは」
言葉を発すると同時に、妹は大爆笑をしてる。
頭の中は混乱してる。一言で言い表すのであれば「え?」だ。
そんな俺に笑い転げている妹は言葉を続ける。
「うう~~~ もぉ~笑わせないでよぉ~ お兄ちゃんの顔面白すぎ~
そんな真面目な顔して~~~」
えっと、茶化されてただけって事?
「お兄ちゃんだよ~? 好きは好きだけど違う意味に決まってるじゃん~」
………
「あははは~ 分かってたって~」
話を合わせることしか出来ない俺……
ぎこちない作り笑いをする事しかできなかった。
はぁ~ そりゃそうだ… そんな甘い話があるわけないか……
「ねぇ?それはそうと… 晩ご飯どうしようか?」
亜優に言われて気がついたが、晩御飯の事をすっかり忘れていた
「そうだよな… 何かあったっけ?」
「カップ麺位かな? 亜優は別に構わないけど…」
「あぁ… 俺も構わないや」
「おっけ~ 時間まだ早いけど今から食べる?」
壁にかかってる時計を見ると、時刻は6時だった。
確かに晩御飯の時間では無い。
だが、亜優が折角作ってくれるというのだ。
俺は断る事なんか出来ません。
「頼むわ」
カップ麺を二人で仲良く食べ、(と言っても、会話は殆ど無かったんだが)
なんとなく部屋へ行くのが面倒で、制服姿のまま居間でくつろいでいた。
亜優も同じなのか、制服姿のまま居間に居て、同じテレビを見ていた。
映し出されているのは特に面白くも無い芸人が次から次へとショートコントを披露する番組だ。
亜優はそれを見てげらげら笑っているのだが、俺はその亜優の姿を見ながらニヤニヤしていた。
制服姿があまりにも可愛いのだ。
くどいようだが、とてつもなく可愛い妹なのだ。 仕方が無い。 不可抗力なのだ。
そんなつかの間の幸せを感じていると、
「あ、亜優お風呂入るけど、先いいかな?」
勿論おっけーです! 亜優の入った後じゃないとお風呂が楽しくないじゃないか!
体を洗うゴシゴシのやつや、風呂場の椅子、浴槽に至るまで、
亜優が使った後だから、俺は幸せを感じるのに……
「先入っていいよ。 俺は後から入るから」
「さんきゅ~ お兄ちゃん~」
そう言うと、自室へ着替えを取りに行った後、
「んじゃお先に~」
と言い残し、お風呂場へと向かって行った。
そして俺はテレビを見た…… のだが、
シャワーの音に意識を奪われ、テレビ所ではないのだ。
両親が不在で、大好きな妹がお風呂に入っている。
覗きに行かないで、男を語れるのか?! 涼ぉぉぉぉ!!!
頭の中で天使と悪魔が凄く激しく言い争っている。
天使「覗きなんて最低だよ?!」
悪魔「ばれなきゃいいんだって!」
天使「ばれた時には言い訳できないよ? 一生口聞いて貰えないかも!」
悪魔「理由を作ればいいんだよ。 ばれたらばれた時だって」
天使「駄目よっ!」
悪魔「お前も見たいんだろ? 天使さんよぉ~」
天使「……」
言い返せ!天使! このままノックダウンでいいのか?!
悪魔の囁きに言い返せないのかよぉ~!
悪魔「ほら… 見たいんだろ? 行こうぜ?」
天使「ちょっとだけだぞ?」
悪魔さんの勝利~ というわけで、まるでコントの泥棒のように
欧米並みのアクションで、こそ~っと浴室へと足を運ばせる。
…… 両親が居るときだと絶対に出来ないな… こんな事。
こそ~っと…
…………
「おにいちゃ~ん? リンス無いから持ってきて~?」
心臓が止まった。
亜優の奴、どこかで見てたのか?! あまりにもタイミングが素晴らしい。
これが女の勘というやつなのだろうか…… と馬鹿なことを考えつつ
「分かった~」
と返事をしておく。
いつもなら母親に言うような事なのだろうが、今は俺しか居ない。
リンスの詰め替えを置いてる洗面台の下から取って持って行……
洗面台?!?!
拝啓 妹
洗面台というのは、脱衣所にあるわけで…
それを取ってくれって言う事は、中に入っていいと言うわけで…
お兄ちゃん、興奮しちゃうわけで…
ら~ら~~ ららららら~ら~
「早く持ってきてよ~?」
亜優の声で現実の世界へと引き戻された