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第91話 アグリの訓練 ~マリーサイド~

メフィストが襲来してから数日が経ちましたわ。

あれから、首都へ向かいながら、合間にアグリが訓練をする日々が続いています。

一人ではかわいそうなので、マリーも一緒に付き合っていますわ。


「ぜぇ……ぜぇ……ぜぇ……

 あり……がとう……ございました……」


「いえいえ。

 まだまだ足りないところもありますが、少しは良くなってきたと思います」


セバスチャンにお礼を言うアグリですが、だいぶ息があがっていますわ。

マリーは平気なのに。


「おっ……セバスチャン。

 もう少し手加減してあげてもよくないですか?

 これでは、首都へ向かうにも時間がかかってしまいますわ」


「これでもだいぶ手加減しておりますが……

 その証拠にマリーは全然疲れていないはずです」


「それはそうなのですが……」


アグリは以前よりかは強くなってきているとは思うのですが……

まだまだマリーたちに比べると弱いのは確かですわ。

でも、だからと言って事を急ぎ過ぎているかもとは思います。


「マリー、ありがとう。

 でも、いいんだ……

 こうしていた方が、あれこれ考えずに済むから……」


「アグリがそう言うのであれば、マリーとしては別にいいのですが……」


アグリは何故これだけ一生懸命になるのかがマリーにはわかりません。

正直、ねえさまやセバスチャン、マリーが居れば、ゼドっちなんかは簡単に倒せますわ。

アグリが強くならなくても、困りはしないはずですが……


「少し休憩したら、先へ進もうか。

 訓練していたからって遅れる訳にはいかないし」


アグリはバタンと横になると、一息つきながらそう言いました。


「少しは様になってきているかのぅ……

 さすがセバスチャンじゃ。

 ワシもあやつにいろいろ言っておるが、セバスチャンの方がより的確じゃのぅ」


「お嬢様……

 勿体ないお言葉……」


ねえさまはセバスチャンの教え方がいいと褒めているようですが、厳しいのには変わりはないですわ。

マリーはいろいろ時になって、横になっているアグリの上にドンと乗っかって確認をしました。


「ねぇ、アグリ。

 別にそこまで訓練しなくても今まで通りで良くはないですか?

 この先だって、マリーたちは一緒に行きますし、ゼドっちを倒すまでは協力しますのに」


「休んでいる俺の上に乗って聞くことじゃないけど……」


「あら、失礼しましたわ。

 でも、この方が楽に話せるかと思って」


「そう楽でもないけど……まぁ、いいや」


そうアグリは言うと、マリーにアグリなりの考えを教えてくれました。


「俺自身、この間みたいに弱点として扱われるのは嫌なんだ。

 ゾルダたちには遠く及ばないかもしれないけど、せめてお荷物にはならないようにしたい。

 それに……」


そう言った後、アグリは沈黙を続けました。


「だから『それに』ってなんですか?」


「ううん、いいや。

 まぁ、お荷物にならないようにしたいってこと」


何か言おうとしていたのかとは思うのですが、最後まで口にしませんでしたわ。

他にも何か考えているのでしょうか……

もう少しマリーたちを頼ってもよさそうなのですがね。


「どこまでやってもお荷物にしかならんじゃろ。

 ただお荷物なりに強くなってもらわねば困るしのぅ」


「相変わらず、ゾルダははっきり言うな……

 ただ、ゾルダの言う通りだし、お荷物なりに頑張るよ」


「おぬしも自虐的じゃのぅ。

 ワシらと比べるから悪いんじゃ。

 もうちょっと下のものと比べないとのぅ」


「ハハハ……

 それもそうだね。

 気を付けるよ」


力のない笑い声で返すアグリ。

やはり先日のメフィストとの戦いから、様子がおかしく感じます。

迷い……?

焦り?

複雑な心境なのかもしれませんわ。


「アグリはもう少しマリーたちを頼ってもいいと思いますわ。

 ねぇ、ねえさま」


「……そうもいかんじゃろぅ……

 この先のことを考えると……」


ねえさまはいつになく真剣な表情になりましたわ。


「それはどういうことですか?」


「自ずとメフィストとやらの時と同じになると言うことじゃ。

 いや、必ずそうなる。

 ワシらが倒せないと考えるなら、まず真っ先に狙われるのはあやつじゃからのぅ」


「確かにそうですが……

 でも、マリーたちならアグリを守れますわ」


「それもその通りじゃ。

 でもあやつは、それを嫌っておる。

 あやつ自身が守られるのを嫌がっておるのじゃから、己が強くなるしかないかのぅ」


どうしてそこまでアグリは強くなりたいのか……

マリーにはそこがどうしても理解できませんでした。


「当然、あやつに今死なれては困るから、ワシらは守るがのぅ。

 最終的にどうなっていたいかが、あやつの中にあるのじゃろぅ。

 そこを止められる訳ではないしのぅ」


ねえさまは突き放しているようで実はアグリのことをしっかりと考えていらっしゃるのですね。

今までもそうだったのかしら。

昔のねえさまはそこまで肩入れすることもなかったように思います。

そこもアグリと接しての変化なのでしょうか……


「あの……

 勝手に俺の事を語っているけど……

 ちょっと違う気が……

 いろいろと悩んでいるのは確かだけど、なんというか……」


「みなまで言うな。

 ワシはわかっておる!」


自信満々に言うねえさまを見てアグリは


「いや……たぶん、勘違いしていると……」


不安そうな表情でねえさまを見ていました。


「大丈夫じゃ、大丈夫じゃ。

 ワシに任せておけ!」


「そう言われると増す増す不安になる……

 俺も俺自身の気持ちをあまり整理できてないのに、何故ゾルダがわかるんだ?」


「分かるものはわかるのじゃ!」


ケタケタと大声で笑うねえさま。

アグリは頭を抱えていますわ。


「本当にねえさまには敵いませんわ」


ねえさまは場を和ませているのか本心なのかはわかりません。

それにアグリのことはまだまだわからないことが多いですが……

マリーはマリーなりに行動させていただきますわ。


「首都に着くまでは、マリーも一緒になって訓練しますわ。

 アグリもマリーについてきなさいよ」


「今のではマリーの訓練にもならないですし、もう少し強度をあげましょうか」


「セ……セバスチャン?

 や……やめてくれ~

 強くなる前に俺が死んでしまう……」


アグリの情けない声がこだましていますわ。

この調子だと、マリーにも手ごたえがありそうな訓練は先になりそうです。

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