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第52話 監獄街 ~ソフィアサイド~

鬱屈とした雰囲気が街を覆っておるのぅ。

なんじゃろうな、この居心地の良さは……

たぶんワシらの仲間に近しいやつらが何かしていそうな気がするのぅ。


街についたとたんに感じる雰囲気が人の街ではないように感じた。

明らかに人ではない何かが支配しているのぅ。

もしくは関係しているか……


あやつは馬鹿正直に調査調査と言うが、この感じだけでもわかるじゃろうに……

ホントに感が悪いのぅ。


「なぁ、おぬし。

 この雰囲気、感覚からして調査せずともわかるじゃろ。

 人が作り出したものと違うぞ」


街中の様子を探っているあやつに、ワシが感じたことを伝える。


「そうなのか?

 マリーが聞いた人は税が高いっていっていたから、悪徳領主が何かしらしているんじゃないの?」


あやつからは能天気な答えしか返ってこなかった。


「それもそれであるじゃろうがのぅ……

 それだけではこんなことにはならないとは思うのじゃ」


「ゾルダの言うこともわかったから。

 とりあえずはまだ街の中の様子を伺っていこうよ」


あやつはすごく慎重にことを進めることが多い。

そんなに慎重に進めても事は進んでいかなと思うのじゃがのぅ。


「……勝手にせい」


半ば投げやりにあやつの進め方を容認する。


あやつに付いて街の至る所に行ってみたが、どこも人はまばらじゃった。

男の人の数は少なくそれも爺さんばかり。

逆に女や子供が多かった。

店や宿屋も女が切り盛りしている様子じゃった。


「なんかすごく男の人が少ないな」


「そうだねー。

 それに活気もなくて、報告と全然違うねー」


小娘の娘も話の違いに戸惑っている様子じゃ。

確かに、聞いていた話とは大きく違うのぅ。

もっと栄えて活気があってというのが、街に出入りしている一部の人の話じゃったと……

でももしかしたら、それが全部偽りということもあり得るのぅ。

この感じからすると。


「こうなると、聞いていた話が嘘じゃったということではないのかのぅ。

 一部しか出入りしておらんということは、そやつらも結託しておるということじゃ」


「そうなのかな。

 アルゲオが出ていたことも関係しているかもしれないよ。

 男の人は討伐に向かったとか」


またあやつは呑気な考えをしておるのぅ。


「ゾルダの言うことも考えとしてはあるんじゃないかなー

 中を見ている人が少ないってことは。

 結託しているかどうかはわからないけど、口止めされているとかねー」


小娘の娘はさすが情報を取り扱う小娘の娘だけある。

いろいろなことを的確に感じるところがあるのじゃろぅ。


「そうじゃろ、そうじゃろ。

 小娘の娘はわかっておる」


「へっへー。

 そんなことないよー」


ワシの言葉に照れておる小娘の娘。

そんなところを見せるとは案外カワイイものじゃのぅ。


そのまま続けて街の中を見て回るも、思ったような収穫もない。

ただただ時間だけが過ぎていった。

そして、そのまま収穫もなく、宿屋に戻ることになった。


「あのなぁ、おぬし。

 慎重なのはわかるが、これは時間の無駄じゃったろぅ」


宿に着くなりあやつに愚痴を言う。


「ごめん。

 思った以上に、みんな外で会話してないし、

 聞こうと思っても避けられちゃうしで……」


真面目にも程がある……

本当にもう……


「明日からはやり方を変えるぞ。

 まずは領主の家に突入じゃ」


イライラも積るので、もう直球勝負でいいんじゃないかのぅ。

そういう提案をあやつにしてみた。


「でもな……

 領主の家に行くのはいいけど、突入はやめておいたほうがいいかな」


どこまでも慎重じゃな、あやつは。


「じゃ、どうするのじゃ」


あやつの考えを問いただす。


「うーん……

 フォルトナに様子を見てきてもらうのが……」


「あぁっ?

 小娘の娘にか?

 また失敗するぞ」


小娘の娘を指しながらそう言い放つ。

それは前回もやっておるではないか。

同じことしか考えんのか。


「また失敗するってどういうことー。

 ボクだってきちんと学んでるよー」


小娘の娘は膨れっ面で反論してきた。


「何を学んでおるのじゃ?

 何度も捕まりおって」


あの時もこの時も全部使っておるではないか。


「マリーもねえさまの言う通りだと思いますわ」


なぁ、そう思うじゃろ、マリー。


「まぁまぁ、わかったから争うのは止めてくれ」


あやつが小娘の娘とワシの間に割って入ってきた。

言い争いをしている訳ではなく、ワシは事実を言っておるだけなのじゃがなのぅ。

そんなこんなで明日の方針についてワシたちが話をしていると扉をノックする音が聞こえてきた。


「コンコン」


あやつが扉を開けると、そこには宿屋の女主人が立っていた。


「あの……

 あなた方は外から来られた方でしょうか?」


「はい、そうですが……」


あやつがそう答えると、女主人は泣きながら訴えてきた。


「ここはお互いがお互いを監視しあい、何かあれば領主に通報されて処刑されてしまいます。

 そして外に逃げようものなら……」


そして街の状況を話し始めた。


「街の人たちはここのことを裏では『監獄街』と呼んでいます。

 課せられる税も重いもので生活もままなりません。

 それで人々も疲れ果ててしまっています。

 男たちは、領主に囚われ、鉱山で強制労働させられており、帰ってきません。

 どうか、どうかここ惨状を、国に訴えていただけないでしょうか?」


そう一気に話すと、よっぽど辛かったのか泣き崩れてしまいおった。


「いろいろと教えてくれてありがとう。

 話すのも勇気がいったでしょう。

 あとは任せてください」


話に感化されたのか、あやつが勝手に引き受けてしまう。


「いや、ちょっと待て。

 今はそんなことしておる場合か。

 さっさと先に進まんと……」


ワシらにはゼドを倒すという目的があるはずじゃ。

確かじじい(国王)からも様子を見て来ればいいだけのはずじゃ。

何もそんな苦労することを引き受けなくてもいいはずじゃが……


「でも、この状況は放っておけないよ。

 もしかしたら領主だけでなくて、ゾルダが言っていた人でないものが絡んでいるなら、余計に」


本当にお人好しというかなんというかじゃのぅ……

ここの街の事に対処してもなんらワシらにメリットはないはずじゃのに。


ただあやつが引き受けたなら、やらざるを得ないんじゃろうな。

ワシらはあやつからは離れられんしのぅ。

なんとか早く解決するしかないのじゃろうな。

それはそれでちぃと厄介じゃなぁ……

作品をお読みいただき大変ありがとうございます。

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