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第25話 疑問 ~ソフィアサイド~

しかし毎回毎回あやつはちまちまちまちまと……

多少力はついているようだが、まだまだだのうぅ。


「さてと……

 おい、シエロとやら」


あやつと交代したところで……

えーっと、シエロと言ったかのぅ。

あのオルトロスという種族のやつは。

そいつに言葉を向けてみたのじゃ。


「なんだ」


「グリズリーはお前が差し向けたのか?」


ちと疑問に感じたからのぅ。

シエロとやらに確認してみた。


「我が差し向けていた。

 村の結界を解くためにな。

 それがどうした」


こいつはベラベラと良く内情をしゃべる奴じゃのぅ。

その辺りに頭の悪さが出ておる。


「そうか……

 まぁ、それはそれとして……

 お前の恰好だがのう」


どうしても気になってしょうがなかったのじゃ。


「グリズリーは関係なくないか?

 ウォーウルフは百歩譲って、その顔やら体でだな」


本当は狼と犬で違うのだがのぅ。


「サーペントはその背中におるのでいいとして……

 やっぱり、グリズリーはどこにもおらんぞ、お前の中に」


シエロとやらはワシの言葉にイラついたのか大きな声でワシの話を遮ってきおった。


「そんなこと、どうでもいいだろう!」


いいや。

ワシにとってはどうでもいいことではないのだがのぅ。


「グリズリーというより、翼があるのだから、なんか鳥かなんかじゃろ。

 そうでなければ、ワシは納得ができーん」


「ゾルダ……

 そこにこだわるの?」


あやつが何か呆れ顔でこちらを見ている。

いやいや、ここは呆れるところではないぞ。


「ここは凄く大事なことじゃからのぅ。

 だって、まともに考えたら、ここは体の一部は熊じゃろ。

 もっと言ったら、犬ではなく狼じゃろ」


これだけいろいろなものが混ざっておったら、配下が混ざったようになるじゃろ。

それが違うのがどうにも解せん。


「いやー、別にそこはどうでもいいんじゃないかな。

 戦う前に確認が必要な所だった?」


あやつがどうでもいい口ぶりでワシの言葉を否定してきおった。


「ワシにとっては重要じゃ!

 戦う前に確認しておかないといかんのじゃ。

 だって倒してからは確認出来ないからのぅ」


「おい、そこの二人!

 我を無視して何をごちゃごちゃ話している」


シエロとやらが何かキレておる。

ワシはあやつと大事な話をしておるのに。


「お前もお前じゃ。

 なんで熊を体につけてないのじゃ」


「なんでと言われてもな……

 我の体は昔からこうだ。

 配下がどうなろうと、そんなのは関係ない。

 だったらお前はどうなんだ」


ん?

ワシがどうだというのじゃ。


「前の魔王だったのだから、お前も配下の魔物が全部くっついてないといけないだろ」


はーっ……

ワシも全部つけないといけないだとー。


「ワシにその低俗な理論を押し付けるじゃと。

 ワシはワシじゃぞ。

 何故、魔王になったらうにゃうにゃ全部つけなきゃならんのじゃ」


するとシエロとやらは怒りながら


「お前、自分で『低俗』と言っているぞ。

 お前は我にその低俗な理論を押し付けていたんだぞ。

 わかったかー!」


とワシに向かって怒鳴ってきおった。

何を訳からんこと言っているんだ、お前は。

ワシに対してそのことを言うこと自体が問題じゃ。


「いや、わからんぞ。

 ワシにとっては低俗じゃが、お前には十分通じる理論じゃ。

 ワシとは身分が違う、身分がのぅ」


お前のような低俗な奴だから話している理論なのにのぅ。

全くもって分かっておらん。


「あのさ、ゾルダ……

 俺が聞いてもそれは納得できる話じゃないと思うんだけど……」


まぁ、ワシのような次元の話にはおぬしもついてこれんじゃろ。


「いいのじゃ。

 ワシはワシに通じる理論で話しているのだから。

 ワシさえ納得できれば、それで問題ないのじゃ」


「相変わらず強引だな、ゾルダは……」


シエロとやらはワシの話がわからんのか、怒り心頭という感じでこちらを睨みつけておる。

やっぱり低俗なものと話すのは疲れるのぅ。


「無茶苦茶いいやがって。

 逃げ出した弱虫の前魔王のくせに」


お前、それをここで言うか。

それはゼドのやつが適当に言い出した理由なのにのぅ。

これが末端まで広がっているのは困ったものじゃ。


「お前はどうやらすぐに死にたいようじゃな。

 その覚悟が出来ているから言っておるんじゃろうな」


もう容赦はしないからのぅ。

グリズリーがくっついていない理由なぞ、どうでもよくなったわ。


「逃げ腰の弱い魔王だったくせに何を言っている。

 そんな奴に我は倒せん」


また『弱い』と言ったな。

それがワシにとってどんな言葉なのか思い知らせてあげるわ。


「言い残すことはそれだか、シエロとやら。

 『弱い』奴の力を思い知れ!」


手のひらに力を集め、シエロに向ける。


「氷のブリザードアロー


周りの空気が一瞬で冷え、洞窟内に氷が張り巡らされはじめた。

いい感じで力が出ているのぅ。

シエロとやらの脚も瞬く間に凍り始めている。


「うっ……

 身動きがとれない」


氷の矢もシエロとやらの翼に刺さっていく。

そして、その矢から翼が凍り始める。

これでシエロとやらも飛べないじゃろぅ。


「これでも『弱い』かのぅ。

 『弱い』奴の力で死ぬんだからなのぅ。

 お前はもっと弱いってことじゃからな!」


このワシに対して『弱い』って言ったことを後悔させてやるからのぅ。


「えっ……

 嘘……こんな力が……

 我が何も出来ない……」


「そうじゃ、お前なんぞ、ワシに対して何も出来んわ。

 おとなしく消えろ!」


そうシエロとやらに言い放った。


「闇のブラックフレイム


闇の炎を纏わせた手から黒炎がほとばしる。

そして身動きが取れなくなったシエロとやらに向かっていく。


「つ……強い……

 勇者が怖くて逃げ出したんじゃないのか……

 うわーー……」


炎に包まれたシエロとやらは雄叫びを上げながら燃え盛っておる。


「最後に分かってくれたようじゃな。

 ワシは強いぞ。

 でも、もう遅いわ」


しばらくすると雄叫びも消え、真っ黒なシエロとやらが立っていた。


「ワシを『弱い』というからじゃ」


勝ち誇っておると、あやつがワシに話しかけてきた。


「ゾルダ……

 やっぱりやり過ぎじゃない?

 もっと聞き出せることがあったと思うけど……」


「あんなやつらのたくらみを聞いたとて、他愛もないことじゃろ。

 ワシがおれば、どうとでもなるわ」


そんなことより、ワシの気持ちの方がよっぽど大事じゃわい。

ワシの気分を害したことは万死に値するのじゃ。


「おぬしも気にし過ぎじゃ。

 まずはシエロとやらを倒したことを喜べ。

 はっはっはっ」


それに、どうせ先に行けばいろいろと分かってくるはずじゃからのぅ。

細かいことはそう気にせんでもいいじゃろ。

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