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第135話 ゾルダとヒルダの共闘 ~アグリサイド~

は……恥ずかしいったらありゃしない。

なんで罵倒なんかしないといけないんだ。

俺はSでもMでもなくノーマルだって……


覚悟を決めて言ってはみたものの、顔から火が出るような思いだった。

ヒルダが倒れたからよかったけど、これで何の効果も無かったら……ちょっとぞっとする。

ゾルダにもいろいろと突っ込まれたが、恥ずかしくてまともに顔も見れていない。

知らず知らずに、顔を手で覆っていた。

その時


「アグリ、危ないのじゃ!」


ゾルダの大きな声が聞こえてきた。


「何が危ないって……」


覆っていた手を外すと、ヒルダの上に固まっていた紫の霧が鋭い刃となり俺の方へ向かっていた。


「うぁーーーー」


突然の出来事に叫んで腕で顔を隠して身構えることしか出来なかった。

鋭い紫紺の殺気が俺の肌を刺すような感覚を感じる。

俺はこのままやられてしまうのか……


バチーン――


大きな音と共に濃紫の塵が飛び散った。

もうこれで終わりか……

呆気ないなかったな、俺の人生も。

結局魔王だって倒せなかったし。

残されたゾルダたちはまた封印されてしまうのだろうか……


などとあれこれ考えていたが、痛みが全然ない。

ふと顔を上げると目の前に居たのは、さっきまでそこに倒れていたヒルダだった。


「あぁあん、そんなに慌てなくてもいいのに、このあわてんぼうさん。

 うーん……でもね、あなたの攻めは……あまり美味しくないわ。

 そうね……この子の方が……

 考えただけでゾクゾクするわ」


紫紺の刃がヒルダを突き刺してはいるのもの、悦に入った表情をしているヒルダ。

俺の方を向くとますます悦に入った顔になっていく。


「あ……ありがとうございます。

 でも……それ、大丈夫ですか?」


その尋常じゃない喜びに若干引きつつも、俺を庇ってくれたヒルダを気づかった。


「あら、これぐらい平気よ。

 全然足りないぐらいだわ」


そう言いながら、濃紫の刃を少しづつ抜いていく。

俺から見ると痛そうに見えるその動作も、ヒルダは喜びながら行っていた。


「姉貴、正気に戻ったのかのぅ?

 あやつを助けてくれて、助かったのじゃ」


遅れてゾルダが俺の目の前に来て、ヒルダのことを心配していた。


「あら、ゾルダちゃんが人の心配をしているなんて珍しいこともあるのね。

 しかも名前まで呼んで」


ヒルダは無数の紫紺の針たちを丁寧に一本ずつ抜きながら、ゾルダの顔を見てニンマリとしている。


「あっ、あれはじゃのぅ……

 とっさと言うかなんと言うかじゃ……

 そんなことは姉貴に関係ないじゃろぅ!」


「あれ、そうなの?

 じゃ、この子、気に入ったから、いただこうかしらね」


俺に近づいてくるヒルダはもうなんというか物凄い嬉しそうに見えた。

正直怖いぐらいに笑っている。


「何を言っておるのじゃ、姉貴!

 あやつは……ワシの……」


ゾルダが俺の前に立ちふさがり慌てた様子でヒルダを止めている。


「あらあら。

 ゾルダちゃんのお気に入りってことかしら」


「ち……違う。

 ワシの……道具じゃ、道具!

 こいつがいないと封印が解けなさそうだから連れてきているだけじゃ」


へぇ……俺ってゾルダの道具なんだ。

まぁ、あいつから見れば利用しているだけの奴ってことだろうけど、

改めて目の前で断言されると、さすがに胸にチクリとくるものがある。


「まぁ、いいわ。

 たまにわっちに貸してちょーだいね」


「ふん、姉貴にだってあやつは渡せないのじゃ」


「はいはい、ごちそうさまです。

 それはそうと……」


二人がやり取りしている間も紫の霧は何度も何度も攻撃をし続けていた。

ヒルダは全身で刃を受けつつ、また一つ一つ抜いていく。

ゾルダもそこから溢れた刃をカウンターのように消していた。


しかし、二人ともくだらないというか普通に会話しながら敵の攻撃を受け止めるって……

いったいどういう神経をしているのかと思う。


「わっち、しつこいのはあまり好きじゃないのよ。

 好きな人からだったら永遠に受け止めてあげるけど」


そう言いながら一瞬俺の方を見てニヤニヤとしていた気がする。


「だからいい加減、この鬱陶しいの止めて欲しいわ」


連弾のように続く紫紺の刃を受けながら本体に近づくヒルダ。

しかし、今までのように刺さることもなく、すべて弾き飛ばしていた。


「鬱陶しいのはワシも同意じゃ」


一方のゾルダも魔法で一気に紫弾を弾き飛ばすと本体まで距離を詰めていった。


二人が同時に本体に近づくと慌てた本体も逃げようと動き始めたが、もう遅かったようだ。

二人の手が紫の霧を掴み、上へと持ち上げる。

本体はジタバタしながらも身動きが取れなくなっていた。


「これで終いじゃ」


「もうあなたは要らないわ」


二人がそう言うと掴んでいた手に魔力が集中し始める。


黒闇の炎(ダークネスフレイム)


デュエットのようにハモリながら唱えたその魔法が紫の霧を包み込む。

不気味だった紫の霧がさらに濃く黒い炎に包まれていく。

その不気味さがさらに増していったようにも思えた。

しばらく燃え続いた黒炎が消えるとそこには跡形も残っていなかった。


「姉貴も衰えておらんのぅ」


「わっちもまだまだ若いわよ」


顔を見合わせた二人は一人は豪快に、一人はしとやかに笑っていた。


「ヒルダさん、先ほどはありがとうございます。

 助けていただいて」


俺は改めてヒルダにお礼を言うために近づいていった。


「そんなことないわよ。

 わっちを助けたのはあなたでしょ?」


にこやかな優しい笑顔で答えるヒルダ。


「そういうことになりますかね……」


するとまた突然スイッチが入ったように顔を赤らめて


「さぁ、続きをしましょう!

 もっと……もっと言って!

 ねぇ、あなた」


罵倒のおねだりをしてきた。


「いや……もう勘弁してほしいです!」


ビックリした俺は、ゾルダの後ろに隠れていた。


「姉貴……

 そこは変わってなくて、ある意味よかったけどのぅ……

 こいつはワシの……じゃからいい加減にしてほしいのじゃ」


「はいはい、冗談ですよ」


お茶目な顔で舌をペロッとだすヒルダ。

冗談だったとしても、ちょっとトラウマになりそうな気分だ。


「さてと、こっちは片付いたのじゃ。

 シータはどうなっておる?」


ゾルダはラファエルとクラウディアの相手をしているシータに声をかける。


「ゾルダ様、お時間をいただきましたが、無事この通りです」


シータは右手にラファエル、左手にクラウディアを抱えて、ゾルダの前に二人を放り投げた。


ドスン――


「いったーいなー、もう」


「つぅ……」


ボロボロになった二人が不貞腐れた顔をして座り込んだ。

様子は見てなかったけど、この様子だとシータは二人相手でも十分余力があったみたいだ。

俺が居てもいなくてもそんなに変わらなかったのかもしれない。


「誰もおいどんのこと見てくれなかったしの。

 でも役目は役目だしの」


二人を連れてきたシータも若干不貞腐れた様な顔をしていた。


「ごめんごめん。

 俺も途中で抜けちゃったし……」


「まぁ、坊ちゃんは……

 途中まで手伝っていただけて助かりましたの」


そう笑って答えてはくれたものの、若干苦笑いにも見えなくなかった。


「ゾルダ様、この二人はどうしますかの?」


シータは二人の処遇をゾルダに確認しはじめた。


「こんな雑魚、どうでもいいのじゃがのぅ……」


二人に顔を近づけたゾルダはニヤニヤとしながら思案をしていた。

ラファエルはそのゾルダの顔にビビった様子でカチコチになっていた。

クラウディアは悪びれるようすもなく、さっきまでと態度は変えていなかった。


「次、邪魔するようじゃったら、容赦はしないからのぅ。

 わかったらさっさとここから立ち去るのじゃ」


意外にもあっさりと放免するようだった。

そう言われた二人は、一目散に逃げていった。


「珍しいな、ゾルダ」


いつもだったら、容赦がないのに、どういう風の吹きまわしだろう。


「あぁ、本当にどうでもいいからのぅ、こんな二人」


そうは言いつつも、いろいろとゾルダの中でも考えているのだろう。

同じ魔族同士で争ったりしても意味がないしね。

俺は逃げ帰る二人の後姿を見て、ゾルダの成長を感じていた。


「お嬢様、そろそろアスビモの伝言の件、いかがいたしましょうか?」


セバスチャンがゾルダにそう耳打ちをすると


「おぉ、そうじゃった。

 あいつはもう、世話が焼ける奴じゃのぅ」


面倒くさそうに頭を掻きながらも


「シータ、移動準備じゃ」


すぐに転移する準備を整えるように指示し始めた。

なんだかんだで弟のことを気にしているのだろう。

ヒルダのこともそうだけど、家族のことは思っているのだろう。


でも、弟とはいったい誰なのだろう?

俺はまだその部分が謎なままだった。

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