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第125話 再びラヒドへ ~アグリサイド~

アスビモの行方を探すため、再びラヒドへ向かうことになった俺たち。

街道を歩き始めたのだが、しばらくするとゾルダが立ち止まる。


「これぐらい離れれば大丈夫かのぅ」


「何が大丈夫なんだ?」


「シータ、始めるのじゃ」


俺の言葉を無視して、シータに催促する。

その目つきは何やら企んでいる感じがした。


「はっ」


うなづいたシータは、何やら準備を始めた。


「これって……」


「うむ、そうじゃ。

 転移魔法じゃ」


「さっきあれほど否定していたのに?」


風情がないだの情緒がないだの散々言っていたのにここは使うのか。


「何を勘違いしておる。

 ワシは全く否定はしておらんぞ。

 ゼドのところに転移で行くのはのぅ……と思っただけじゃ」


「それで、ラヒドへ行くのはいいのか?」


「うむ、早くあのアスビモとかいう奴を倒したいしのぅ」


うーん……

ゾルダの考えにはついていけない。

ゼドのところへ行ってアスビモのことを聞くのがダメで、ラヒドはいいんだ。

俺からすると筋が通っていないようにしか見えない。


「あの……

 ゾルダ様と坊ちゃん。

 何をごちゃごちゃ話されておるのですかの」


転送魔法を発動させようとしているシータが、俺たちのやりとりがを遮る。

話が長くなると感じたのだろう。


「おぅ、すまんのぅ。

 さっさとラヒドとかいうところへ行くぞ」


「了解……

 まぁ、いいけどさ。

 ただ俺にはゾルダの基準が良くわからないよ……」


そういいながら、俺はシータの近くに行った。

他のみんなも転移するために、発動範囲に集まってきた。


「では、行きますかの。

 ワープ」


地面に描かれた魔方陣からの光に体が包み込まれ、

次に光が解き放たれた時には、ラヒド近くの街道横の森についていた。


「やっぱり便利だな」


「そうじゃろ、そうじゃろ」


得意気に話すゾルダ。


「いや、使ったのはシータだろ。

 なんでゾルダがドヤ顔しているんだ」


「指示したのは、ワシじゃからのぅ」


確かにそれはそうだけど、それでドヤァ出来るのは凄いなと。


「はいはい。

 ゾルダのおかげだねー」


とりあえず軽くあしらう感じに答えておいた。

俺の内心をまったく感じていないゾルダは、さらに満足げな顔をしていた。


「そう言えば、さっきもそうだけど、なんで街に直接いかないんだ?」


転移する時も、街からは離れた場所でしていたし、なんでだろうと思った。


「坊ちゃん、それはですな……

 転移魔法自体が使える者が少なくての。

 多分ですが人族は使えるものはいないかと。

 だから大っぴらには出来ないんだな」


そういうことか。

人族から見れば失われた魔法ってところなのか。


「だからわざわざ街から離れたところで使っていたんだ」


「そういうことですな。

 ただ少しは歩かなくてはいけなくて申し訳ないですがの」


「まぁ、これぐらいはね。

 ここまで歩いてくることに比べたら、なんてことないよ。

 助かるよ、ありがとう」


シータにお礼を言う俺に、ゾルダが近づいてきた。


「指示したのはワシなんじゃが」


「なんで何もしてないお前がしゃしゃり出るんだ?」


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何をしてほしいんだ、ゾルダは。

シータにお礼を言ったのが気に食わないのか?

お前もお礼を言ってほしいのか?


「はいはい。

 ゾルダもありがとうな」


「そうじゃ、そうじゃ。

 ワシにも感謝せねばのぅ」


満足げな笑みを浮かべるゾルダ。

いや、それでもお前は何もしていないと思うんだが……

ゾルダの態度に少し戸惑いつつも、ラヒドに向けて歩き出した。


ラヒドに着くと、俺たちはジェナさんがいる商業ギルドへ向かっていく。

街の中は相変わらず活気に満ち溢れていた。

種族入り乱れての活況に改めてここはどの勢力にも加担していないのだとわかる。


「やっぱり分け隔てなくっていうのがこれだけ発展する理由なんだろうな」


ここにくると種族や国で争うなんて馬鹿げていると感じる。

そう感じていたのだが


「ここも表面だけですよ、アグリ殿。

 裏も自由ですから、小さな争いごとは日常茶飯事です。

 昼間からはやりませんがね」


ボソッと俺の耳元で、セバスチャンが補足する。

その言葉を顔から血の気が引く感じがした。


「うそ? そうなの?」


「血生臭いやりとりも含めて自由ですから。

 最低限のルールを守っていれば、ここでは咎めることもないかと。

 ジェナ殿も暗黙にしているところもあるでしょうね」


「そうなんだ……

 でもみんな楽しそうに生活しているのを見ていると、そんな感じはしないんだよな」


まぁ、どの世界でも裏はあるのだろうけど……

出来ればそういうところとは関わりたくないなぁ。


しばらく歩くとジェナさんのいる商業ギルドに到着した。

中に入り、受付の人にジェナさんに会えないか確認をする。

以前応対してくれた受付の子だったこともあり、俺たちの姿を見てすぐに確認をしてくれた。


「ギルド長ですが、今日はあいにく不在でして……

 明日であれば、いるかと思います。

 明日改めて来ていただければと思います」


「ありがとう、助かったよ。

 また、明日来ますね」


「なんじゃ、急ぎなのじゃがのぅ……

 でも、いないなら、仕方ないかのぅ」


ゾルダは不満な顔をしていたが、いないものはどうしようもできないのも分かっているらしく、素直に引いていた。

それでも、素直過ぎるのはちょっと気になった。


ギルドを出て、近くの宿を探して部屋を借りた俺たち。

部屋に入り、一息をつこうとしたのだが……


「おい、おぬし!

 何をのんびりしておるのじゃ。

 時間が出来たのじゃ。

 今晩も酒じゃ!」


ゾルダは宿に着くなりニカニカした笑顔で酒を要求してきた。


「昨日あれだけ飲んだのに、また飲むの?」


「おいどんは……遠慮したいですな」


今朝の二日酔いからは解放されているシータだったが、そのことが頭をよぎっているようだ。


「シータ!

 何をそんな及び腰なのじゃ。

 そんなものは飲んで鍛えるしかないのじゃ。

 強くなるには鍛錬の一択じゃ」


確かに強くなるには鍛えることは必要だけど……

酒も一緒なのか?


「酒と強さと一緒にするなって」


「いいや、酒も力も一緒じゃ、一緒!

 もう、そんなことはどうでもいいから、早く酒を準備するのじゃ」


「はいはい。

 お前はもう自由に飲んでいればいいよ」


宿の女将さんに、酒を注文して持ってきてもらうと

ゾルダは昨日と同じく湯水のように飲み始めた。

まぁ、このゾルダはこうしておけば大人しくしているし、いいか……

妙なあきらめの中、宿での夜が更けていった。

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