第124話 あいつらはどうしたのだ ~ゼドサイド~
ソフィアを倒すように命令したメフィストが一向に帰ってこない。
ランボとか言ったかな、東方面の攻略を任せたのに、こちらも何の音さたもない。
頼りがないのはいい知らせという言葉があるようだが……
連絡は逐一よこせと言っているのにこれだから、好き勝手やってくれて困る。
近くにいた近衛兵に確認する。
「おい、あいつらはどうした?
なんの連絡もないではないか!」
「申し訳ございません。
状況把握するために、使いを送っていますが、その使いも行方知れずになっております。
再度送っておりますので、今しばらくお待ちください」
余が状況を知りたがっているのは十分理解できているようだ。
ただ使いも帰ってこないとなると、何かあったのだろうな。
「もうよい。
下がっておれ!」
あいつらが使えないことはわかっていたが、ここまでとはな。
イライラが止まらない。
近衛兵を強い言葉で追い払う。
「も……申し訳ございません」
慌てて下がる近衛兵と入れ替えに、アスビモが入ってきた。
「ゼド様、何をそこまでお怒りになられているのでしょうか?」
飄々と近づいてきたアスビモ。
余がイラついているのに、何食わぬ顔をして、気に食わない奴だ。
「なんだ、アスビモか。
どいつもこいつも使えない奴らばかりで、腹がたっていたところだ」
「ゼド様の仰ることは分かります。
そうイライラせずに、使えないものはさっさと見限ればいいだけです。
使って使えるものだけ残せばいいのですから」
「そう思うなら、使える奴らをさっさと連れてこい」
アスビモは困った顔をしているようだな。
「そう仰られても困りますね。
私の仕事は商人であって、人材紹介ではないですから……」
「そう言えばお前が連れてきた、ランボとかいう奴も、東方へ行ったきり何の連絡もないぞ」
さらに困ったような顔をしつつも、それが本心ではなさそうな表情をしている。
「あぁ、あいつですか……
あいつなら、ソフィア様に倒されていると思いますよ。
いろいろと手に掛けた大事な商品でしたが……」
「何?
ソフィアだと?
あいつにはメフィストを差し向けたはずだ!」
まだ生きているということはメフィストもダメだったのだろうな。
ソフィアはあいつでも太刀打ちできないほどになっているということか。
「その辺りは私は詳しく存じ上げておりませんが……
ソフィア様がその場におられたということは、そういうことなのでしょう」
「くそっ、本当にどいつもこいつも……
ソフィアごときに手間取りやがって……」
封印が解かれていないなら、そこまでではないはずなのに。
それにあれから数百年経っている。
その間、ずっと封印されていたなら、満足に力も使えていないはずだ。
なのにあいつらときたら……
どうせ油断して足元をすくわれただけだろう。
「おい、お前ら!」
部屋の外にいた近衛兵たちを呼び出し指示を出す。
「ラファエルとクラウディアを至急呼び出せ!
二人でソフィアを討つのだと」
その言葉にびくびくしながら近衛兵が余に進言をしてきた。
「それですと、王国への侵略が滞るかと……」
「そんなことは、いくらでも後で巻き返せる!
まずはソフィアだ!
その後のことなどまだ考えなくてもよいわ!
そんなこともわからないのか!」
つくづく思考が回らない部下たちだ。
状況を考えれば自ずと答えが出てくるだろうに。
「は……ははっ」
そう返事をすると、近衛兵たちは一目散に走っていった。
その一部始終を見ていたアスビモが
「何故、ゼド様が自ら出ていかれないのですか?」
「完全に封印が解かれていないソフィアなど、余が出るまでもない」
「まぁ、そうですかねぇ……
大将が自ら出向くほどではないとの考えだとは思いますが……」
「なんだ、お前!
今、言葉を濁しただろ」
「はい。
念には念を入れてですね。
より改良した強化薬を使われてはいかがかと」
そう言うとアスビモは手のひらに薬の瓶を取り出した。
いつも購入している薬の強化版だと?
使えない連中が多いから、あいつらに渡すために買っていたものだぞ。
余には不要なもの。
それに……その言い方だと余の力はソフィアより劣るというのか!
「そんなもの使わなくても大丈夫だ!
お前には余はそこまで弱く見えるのか?」
「いやいや、滅相もございません。
だから、念には念を入れてという話です。
使う使わない関係なく、常備されておくとよいかと」
取り出した薬を床に置くと、手もみをしながら満面の笑みのアスビモ。
どんな時でも商売に繋げたがる奴だ。
「とりあえず、そこに置いておけ。
代金はあとから届けさせる」
その言葉をきいたアスビモはニンマリとした。
「毎度ありがとうございます。
いつも御贔屓にしていただいております」
アスビモは頭を下げると、その強化薬をさらに10本出して、余の手前に置いていった。
「1本はサービスさせていただきます」
にこやかな顔をしたアスビモが帰ろうとしたその時、
何かを思い出したようにポンと手を叩いた。
「あっ、そうでした。
あと大事なことを言い忘れていました。
ソフィア様とマリー様以外にもあと二人いましたね」
その態度……ワザとらしい。
本当はその話をしにここに来たのではないか。
「他の二人はとは誰だ?」
「私はご存じない方でしたのでわかりませんが、男が二人いましたね。
すらっとした細身の男と、筋肉隆々の男でした」
細身の男と筋肉隆々の男だと?
それが本当ならあいつらか……
「……それは確かか?」
「はい。
私はゼド様に嘘はつきません」
だとするとあの2人で4人を相手にすることになるな。
ただまだ封印が完全に解けていない4人だ。
あいつらが全力で相手すれば事足りるだろう。
「いいことを教えてくれた。
礼を言うぞ」
「いえいえ。
私はいつでもゼド様のお味方ですので。
あのお二人にも私から何か戦勝祈願をこめて何かお送りさせていただきます」
アスビモはそう言うと、余の部屋から出ていった。
ソフィアのやつめ……
次から次へと仲間を増やしやがって。
次こそはあの2人で叩きのめしてやるからな。