表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
122/128

第121話 アスビモの仕掛け ~ソフィアサイド~

あやつがあのデブを倒したと思ったのじゃが、どうやら何かがありそうじゃ。

横たわって意識がないランボとかいう奴からは、明らかに違う魔力を感じる。


「どうやらランボが倒された時に発動する何かが仕掛けられていたのかと」


セバスチャンがその様子を見て、ワシに話をしてきた。


「そうじゃのぅ。

 まぁ、なんとなく誰がこんなことをやったのかはわかるがのぅ」


倒れていたランボとやらが意識のないまま立ち上がると、禍々しいオーラと共に大きくなっていった。


「うわぁー」


あやつがビックリしたのか悲鳴を上げて、地面に転がっておる。

いちいち驚き過ぎじゃろぅ。


「ねえさま、どうしましょう……

 あんな大きいものみたことないですわ」


マリーも大きさに驚いているようじゃ。


「見た目だけをみておるからアタフタするのじゃ。

 こんなのワシに比べたら、魔力も力もまだまだじゃからのぅ」


大きくなったデブは意識があるのかないのかよくわからん。

ワシらに襲い掛かってくるというより、そのままジョードの街を目指し始めたようじゃ。


「おい、デブ!

 お前の相手はワシじゃぞ」


浮遊魔法で飛び、デブの前で大きな声で叫んだのじゃが、どうやら聞えてはおらぬようじゃ。

聞こえておらんというより、もう意識がないのじゃろぅ。


「ゾルダ様、これは対象が死後に発動する強化と自動使役の魔法ですな。

 おそらくジョードの破壊が組み込まれているようですな」


シータはランボとやらの状態や動きを見て、どのような魔法がかけられておるかを見極めたようじゃ。


「なんじゃ……

 意思がなく勝手に動いているだけか。

 それじゃ、戦ってもつまらんのぅ」


少しは骨のあるやつとやれるかと思ったのじゃが、こんな気持ちがないやつとやっても面白くない。

一気にやる気が失せてきたのじゃ。


「もうこのデブはいいのじゃ。

 それよりアスビモを探さないとのぅ」


周りを見回すとあのデブの近くに転移魔法の魔法陣が見えてきた。

そこに姿を現したのは、なんとアスビモのやつじゃった。


「ごきげんよう、みなさま。

 またお目にかかりましたね」


なんとも言えぬ笑みを浮かべておるアスビモの奴。


「よくものうのうと顔を出せたものじゃのぅ、アスビモとやら」


ただ、またワシの目の前に出てきたことは褒めてやらねばのぅ。


「これはこれは、ソフィア様。

 私の名前を憶えていただけたようで、大変光栄でございます」


「お前、その名で呼ぶな!」


「失敬、失敬。

 ゾルダ……様でしたね。

 ご機嫌麗しいようで何よりです」


いちいちワシを煽るような口調で話してくるのが気に食わん。


「ようここに現れたのぅ。

 ワシに殺される気になったか」


「滅相もございません。

 私は商品の様子を見に来ただけですので」


そういうと、ランボとかいう奴のことを見始める。


「あらあら。

 あっけなくこの姿になってしまいましたか……

 だいぶ投資をさせていただいた商品ですから、もう少し頑張っていただかないと……」


少し不服そうな顔をしながら、独り言のようにしゃべり始めた。


「でも、組み込んだものの発動はしっかり確認できましたし、

 今後の商品にも十分使えることがわかりましたので、安心しました」


「何をブツブツ独り言を言っておるのじゃ!」


眼中にも置かないしぐさに腹をたてたワシはアスビモのところへ向かう。

じゃが、アスビモもワシからは一定の距離を保ち、近寄ろうとはしなかった。


「おい、アスビモとやら。

 怖気着いているのか」


「はい、そうです。

 大変申し訳ございませんが、()()ソフィア……ゾルダ様には太刀打ちが出来ません。

 やり合うつもりも毛頭ございません。

 怖気着いているという言葉であっているかと思います。

 私もまだまだ命は惜しいですので」


口では怖いと言いつつ、あの態度。

全くもって腹が立つ。


「大人しく、ワシにやられるのじゃ」


「いいえ。

 まだまだやり残したことがございますので。

 ……っと、そろそろ時間ですね。

 大変申し訳ございませんが、商品の状況も確認できましたし、

 次の商談がございますので、この辺りで失礼させていただきます」


そういうと転移魔法を発動して、すっと消えていきおった。


「くっそ、あいつ……

 ワシを小馬鹿にしおって……」


また逃したことに腹が立って仕方がなかった。

やり場のない怒りだけがこみ上げてくる。


「あーっ、もう気分が悪い!」


シータやセバスチャンたちは荒れ狂っておるワシを心配そうな目で見ておる

だが、そんなことは知ったことか。

近くにある山々にこの怒りをぶつけた。

その時、


「ゾルダー!

 こっちをなんとかしてくれよ」


気が抜けたような声であやつが話かけてきた。

どうやらあやつは、ランボとかいう奴を止めようと必死で剣を振るっていたようじゃ。

ただあまり効いておらんようで、足にしがみついているようにしか見えないのじゃがのぅ。


「ワシは忙しいのじゃ!

 そいつはおぬしに任せたのじゃ!」


「任されたけどさぁ、俺じゃどうにもならないんだって。

 デカいし固いし、攻撃が全然効かないし」


「なら、放っておけばいいじゃろ」


「そうはいかないよ。

 ジョードの街を守らないと。

 頼むからさ、手伝ってくれって」


別に街の一つや二つどうなってもよかろうに。

それに……なんかこいつを倒すとアスビモにいいように遊ばれているようで、釈然としないのじゃ。


「じゃがのぅ……」


「こいつ倒したらさ、酒をいっぱい飲んでもいいから。

 最近、いろいろあって飲んでないだろ?

 ジョードならもしかしたら変わった酒もあるかもよ」


変わった酒?

それはどんなものじゃろぅ。

気になるのぅ。

いやいや、酒ぐらいでワシは……


「たらふく飲んでもいいんじゃな。

 その言葉に二言はないな」


「あぁ、ないない。

 いっぱい飲んでいいよ」


「し……仕方ないのぅ。

 べ……別に酒に釣られたわけじゃないからのぅ。

 珍しい酒に釣られたわけじゃないからな!」


「わかった、わかったって。

 ゾルダはそんなやつじゃないから。

 俺の頼みが断れないだけだよな」


「そっ……そうじゃ。

 だから仕方なしじゃ」


では気を取り直して、酒のため……

じゃなく、あやつの頼みのためだしのぅ。


黒闇の炎(ダークネスフレイム)


ワシの周りに黒く怪しく光る炎を数十個ほど待機させると、一気にあのデブに向けて放った。

漆黒の炎に包まれ始めると、動きが鈍り始めた。

たぶんとうに死んでおるのじゃろぅ。

悲鳴や叫び声は一切しない。


「まだ足りないかのぅ」


さらに数十発の黒炎をランボとかいう奴にぶつける。

すると動きは止まり、黒く焼け焦げた体が崩れ落ちていった。

そのまましばらく焼け続けて灰になっていきおった。


「ありがとう、助かったよゾルダ」


あやつは笑顔でワシに手を振ってきた。


「これでいいのじゃな」


「これでジョードの街にも被害を出さずに済んだよ」


「……さっきの話じゃが……」


「あぁ、忘れてないよ。

 トルヴァルドさんに報告してからな」


「絶対に忘れるでないぞ」


アスビモの奴には逃げられたが、ひとまず酒が飲めるので良しとするかのぅ。

でも、アスビモ、絶対に次は倒すからのぅ。

覚悟しておけよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ