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第115話 神秘の街ジョード ~アグリサイド~

新しく加わったシータの転移魔法で、予定より早くジョードの街に着いた。

ここの街並みは江戸時代を思わせるような建物がずらずらと並んでいる。

そうかと思うと、思いっきりファンタジー世界のような建造物もある。

でも、和の雰囲気が強く、とても懐かしさを感じる。


とは言え、実際に江戸時代の街並みに触れ合ったことがある訳ではない。

ただそう言えば、日光の江○村や京都の太秦○画村とかは行ったことあったかもしれない。

時代劇やアニメでは見たことがあるが、俺の中では完全に画面の中の世界である。

それでも懐かしさを感じるのは、日本人の遺伝子なのかな。


「なんか昔の日本のような街並みだ」


懐かしさもあるし、興味もあるので、あちこちに目移りする。


「そのニホンとか言うのはどこなのじゃ?」


「私も存じ上げておりませんので、アグリ殿にお聞きいただけると……」


ゾルダとセバスチャンが俺の方を見ている。


「知らなくて当たり前と言うか、なんと言うか……

 俺の生まれたところではあるんだけど、ここからは行けないところだし……」


「そう言えば出会ってすぐのころに違う世界から呼び出されたと言っておったのぅ……」


「えっ?

 ねえさま、アグリって別の世界の人なのですか?」


マリーが驚いて大声を出す。


「どこからとか細かいことは聞かなんだが、そんなことを言っていたとは思うぞ」


いつもは細かいことはあまり覚えていないゾルダだが、なんでそんなことは覚えているんだ。


「おいどんは、その別世界から召喚出来る魔法の方が興味があるな。

 どんな仕組みなのかな。

 召喚する人は選べるのでしょうか……」


シータは召喚魔法に興味津々である。

考えながらブツブツと言い始めた。


「アグリは、こんな感じの世界から来たのですか?

 マリー、気になりますわ」


マリーは俺の故郷のことが気になるらしく、手を掴み顔を近づけてきた。

あれ、こんなフレンドリーだったけ?

もっとゾルダにベッタリだったような気がするけど……


「こんな感じのところではないよ。

 あくまでも大昔、こんな感じのところだったってことだけど……」


マリーの顔が近いので、顔を背けてしまう。


「それじゃ、アグリが来た世界はどんなところだったのですか?」


「そうだな……

 すごく高いビル……建物がいっぱい建ち並んでいて。

 車……自動で動く馬車みたいなものがいっぱい走っていて。

 ただまぁ、情緒も何もない、無機質な感じがするところだよ」


「それでそれで?」


何をこんなにマリーは喰いついてくるんだ?

キャラ変したのか?

と戸惑っていたが……


「そろそろ、やめよ、マリー」


興味津々で俺に近づくマリーをゾルダが止めに入る。


「ねえさま……

 はっ……

 ご……ごめんなさい。

 つい夢中になってしまいましたわ……」


「分かればよい。

 好きなのはわかるが、節度はわきまえよ」


ゾルダが節度を語っているのはなんとなく違う気がするが……

ゾルダの方こそいつも節度をわきまえて欲しいよ。


「ところで、マリーは何故この話に喰いついたの?」


「アグリ殿……

 その……お恥ずかしい話なのですが、マリーはその……

 別の世界から来たとか転生してきたとか、そういう話が好きでして……」


「そうなの?

 こっちの世界にもそんなラノベみたいなのがあるの?」


驚きである。

自分が今、体験していることもラノベみたいなものだけど、こっちにもそういう話があるとは……


「らのべ……というのは良く存じ上げておりませんが……

 アグリ殿のように他の世界から来た方々というのは、昔から少ないですがいるようです」


「そうなんですね」


「そう言った方々のことを書かれた書物や話は結構ありまして……

 小さいころからマリーはその話が好きでした……

 そして今はこんな感じに……」


まぁ、所謂向こうの世界で言うオタクなのだろう。

ただこちらでは娯楽も少ないし、本も簡単に手に入る感じではない。

マリーも結構なお嬢様ってことか。


「そうなのですわ。

 特に異世界から来たケニーって男の子が、この世界で魔王に成り上がっていく話が……

 それで、異世界の方を間近で見たのは初めてでしたので、

 ちょっと抑えきれなくなってしまいましたわ」


ちょっとどころではない。

いつものキャラが変わってしまったかぐらいのインパクトで興奮していたと思うが……


「まぁ、そういうことじゃ」


「転移者ってことはわざと隠していた訳ではないけど、話をする機会もなかったからね」


「そのことは別に話さなくても良かったのじゃ。

 こうなるのは目に見えておったからのぅ」


それでもまだ興奮を抑えきれないマリーは俺の事を目を輝かせて見ていた。

これからずっとそんな感じで見られるのかな……


まぁ、いいか。

とりあえず、それは置いといて、ここに来た最大の目的を果たさないと。


「さてと、ジョードに来た目的、アスビモを探さないとな」


「うむ。

 あちこち戦闘の後もあるからのぅ。

 この街を攻め込めるところに魔王軍がいるのじゃろ」


先ほどまでにこやかな顔をしていたゾルダも、アスビモの言葉を聞くと目の中に怒りが滲み始める。


「まずは、状況を把握しないとでいけませんね。

 本来なら私の役目ですが、封印が完全に解けていない今はアグリ殿から離れられませんしね……」


「そんな悠長なことしておれるか。

 正面突破あるのみじゃ」


相変わらずゾルダは強引だな。


「正面突破するにもどこにいるかはきちんと情報を掴まないと。

 闇雲に探してもつかれるだけだよ」


「うぅ……

 わ、わかってはおるのじゃ……

 だが、早くアスビモとやらを倒したいのじゃ」


ゾルダは前回のことを思い出しているのかイライラしていた。


「そもそも、ジェナさんから話を聞いてからだいぶ経っているし。

 だから、ここに必ずいるって訳でもないだろうし」


いろいろとあって、あれから随分と時間が経過していた。

そもそも武闘大会なんか開かなければもう少し早く来れたんだけど……


「じゃが……

 じゃが……」


どうもすぐにでも戦いたいゾルダは情報を集めることを渋っている。


「状況も分かってないのに無策で飛び込むのは危険だって。

 あのアスビモのことだから、何か準備しているはずだろ?

 そういう奴なんだろ、あいつは。

 気持ちは分かるけど、もう少し慎重に行こうよ」


「ぐぅ……」


前に会った時もそうだけど、アスビモは狡猾な奴なのだろう。

これだけ時間が経っていれば何か策を講じているに違いない。

いろいろと話をしてゾルダも渋々納得してくれたようだ。


「では、まずはここを治める一族へ話を聞きに行きましょう。

 昔からここはトーゴ一族が治める街です。

 変わってなければですが……」


セバスチャンがそう話すと、街の中心にある城を指さした。

これこそ、ザ・日本という感じの城で、周りも堀が張り巡らされている。

なんかここまで日本って感じなのはなんだろう……

疑問に思いつつも、まずはトーゴ一族が住むという城へと向かっていった。

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