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第112話 ここはどこだー! ~アグリサイド~

眩しい光に包まれて目を瞑った俺が次に目を開けると真っ暗な空間に立っていた。


「ここはどこだー!」


周りを見ると、ゾルダやマリー、セバスチャンは立っていた。

どうやら無事のようだったので、安心したのだが、様子がおかしい。


ゾルダに声をかけるも反応がない。

マリーもゆすってみたが反応がない。

セバスチャンも同じだった。


「おい、みんな、なんで動かないんだ?」


みんなぐったりしている訳ではなく、動きが止まって固まった感じに立っている。

どうやら死んだりしている訳ではなさそうだ。

これは転移魔法の影響なのか?

それにそもそもここはどこなのか。

たぶん、ゾルダの魔法が失敗したかなにかなのだろう。

とにかく暗くて見えづらいので、灯りをつける


「ライト」


空中に光が浮遊すると辺りを照らし始めた。

地面はあるが、土のような感覚もない。

薄い一枚板の地面の3D空間にいるような感じだ。

右も左もどこまで続くかわからない空間が広がっている。


「なんか昔の3Dゲームのような空間だな。

 昔と言うか、ゲームの練習用の空間みたいな感じかも」


と独り言を話しても何の反応もない。


「さてと……

 ここからどうやって脱出すればいいんだろう」


そもそもここがどこかのかもわからない。

こういう時にセバスチャンが動ければアドバイスの一つもしてくれそうなのだが……

セバスチャンの方を見やるも、まだ動く気配はない。


「うーん」


闇雲に動いても仕方ないし、どうしたものかなと考えてみるが何も浮かばない。

動けるのは俺一人だし、どうにかしないといけないのは確かだ。


それでもない頭を捻って考えていた。

しばらくすると、奥の方がなんかもやもやしたようなものが見えてきた。

その方向を見ると、遠くから何かの大群のようなものがこちらに向かってきた。

こっちに向かうのは分かるのだが、不気味なことに何も音がしない。

スーッと寄ってきたと思ったら、俺たちを取り囲んでいた。


「なんだ?

 お……お化けか?」


実体があるようでないような姿をしている。

浮遊している霊体のような感じだ。

それが無数にいる。


「なんなんだよ!

 お前たちは!」


そう叫ぶも反応もなく、俺やゾルダたちを静かに見ている。

今の段階では特に攻撃するようなことはしてこない。

様子を伺っているような感じだった。


すると奥の方からスルスルと1体、他の霊体と明らかに違う奴がこちらに向かってきた。


「オマエハ……イキテイル……ノカ?」


片言の言葉で俺に質問をしてきた。

これは素直に答えたほうがいいのだろうか?

それとも……


「ここはどこだ!

 お前は誰だ?」


こういう場合は、返答するとなんかしら起きるのではないかと思った。

だから質問に対して質問で返してみた。


「ココハ……ワタシニモワカラナイ……」


そう答えた霊体はまた同じ質問を繰り返す。


「オマエハイキテイルノカ?」


ここは答えちゃだめだ。

何かいい返しがないかを考えるが、なかなか思い浮かばない。

沈黙が続く。


「オマエハイキテイルノカ?」


霊体は少し語気を強めて同じ質問を繰り返す。


「……」


答えるより黙っていた方がいいとは思ったのだが、言葉が強くなってきたので、そうも言ってられない。

たぶんこのまま黙っていても何かが起こるだろう。

そう思った俺は


「お前は死んでいるのか?」


とまた質問を返した。

この大群が控えている中で慌てていることもあり、また機転が利かない返しだったと思う。

苦し紛れで、相手の質問の逆の質問をした。


「ワタシハシンデイルノカ……ワカラナイ」


そう返答する霊体。

自分自身が何者かわかっていないのかもしれない。

人だったものなのか、それともそう勝手に思っているものなのか……

とにかく薄気味悪い。

この状況をなんとかしたいと思うのだが、ゾルダたちはまだ動けない。

焦りばかりが募っていく。

そんなことを考えていると、霊体のオーラのようなものが広がり


「オマエハイキテイルナ!」


俺たちが排除すべきものと断定したのか、語気を強めた言葉をぶつけてきた。

それと共に霊体全体に殺気が漲る。


「ココハ……ワタシノ……ナカマダケノ……バショ……

 オマエタチモ……ワタシタチノ……ナカマニ……」


そう言うと後ろに控えていた多くの霊体が襲い掛かってきた。


「うわー」


慌てて剣を振るう。


――ブン


霊体だから感触はない。

でも何故か剣に触れると霊体は消えていった。


それでも怯まずに霊体は向かってくる。


――ブン

――ブン

――ブーン


剣が空を斬る音だけが空間に響き渡る。

剣に当たった霊体が消えるが次から次へと霊体が増えてくる。


最初はなんとか捌き切れていたのだが、数も増えてきて捌き切れなくなってくる。

そして霊体たちは俺にまとわりついてきた。

触られた感覚はないものの、なんとなくヒヤッとする。


周りを見ると、ゾルダたちにも霊体が折り重なるようにくっつき始めていた。

そっちもなんとかしないと、と思って霊体を蹴散らしに行く。


――サッ


ゾルダたちを傷つけないようにと思うと、剣の動きは鈍くなる。

それでも剣を振い追い払う。


「くっ……

 もうダメかも……」


霊体の数の多さに思わず本音が漏れる。

とにかく多くて疲れだけが残っていく。

それでも最後まで抵抗はしようと頑張っているのだが、如何せん、どうにもならない。

このままでは本当にダメになってしまう。

そんなことが頭をよぎり始めたその時……


――ピカー


身に着けていた籠手の輝きが増した。

その光が大きくなる俺たちを包んでいった。

すると近くにいた霊体たちも浄化されたように消えていった。


放たれた光が鈍くなると、目の前にはがっちりとした体型の男いた。


「ここは……?」


その男は野太い声で戸惑いの声を上げたかと思うと、周りをキョロキョロと見始める。

そして状況を理解したのか


「あぁ、なんとなく察し。

 ゾルダ様がまたやらかしましたね」


そう言うと、俺に対して指示をし始めた。


「おい、そこの坊ちゃん。

 ゾルダ様たちをおいどんの近くに連れてきてくだされ」


この男はいったい何をするつもりなのか?

キョトンとする俺に


「ほれ、早くしなされ、坊ちゃん」


と急かし始めた。

なんだかわからないが、とりあえずゾルダたちをその男の近くに連れてきた。


「こ……これでいいのか?」


「はい、ありがとうですな、坊ちゃん。

 坊ちゃんもおいどんの近くに来てくだされ」


俺の手を掴み強引に引き寄せた男は


「じゃ、いきまっせ。

 ワープ」


ゾルダたちが念入りに準備していた転移魔法をいとも簡単に唱えた。

ふたたび俺たちは光に包まれる。

その光が消えると、元居た場所に戻ってきていた。


いとも簡単に転移魔法を唱えた男は、一安心といった感じで安堵の表情を浮かべていた。


「えーっと、君は誰?」


籠手が光ってから出てきたのだから、たぶんゾルダの封印されていた仲間なんだろうけど……


「おいどんですか?

 おいどんは、シータと言います。

 ゾルダ様に仕えしものですわ」


その男は頭を掻きながら丸っこい顔がさらに丸くなる笑顔でそう答えたのだった。

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