表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/130

第109話 やっぱりボクは…… ~フォルトナサイド~

魔物の騒動も落ち着き、村には平穏が訪れた。

被害はボクのほかに数人のケガ人と、建物の破損が多少あった程度だった。

アグリたちが来て対応してくれたので、大きな被害にならずにホッとした。


ボクの家へ戻る途中、心配してかボクにアグリが話しかけてきた。


「フォルトナ、大丈夫か?」


「うーん、大丈夫かなー

 あちこち痛いけど……」


「家に戻ったらしっかり休みな」


「うん」


「でも、フォルトナが最初に出てくれて、ある程度時間を作ってくれたのも大きかったよ」


「いやー……

 そんなことないよー。

 体が勝手に動いただけだしー」


「それだけこの村の事を考えているってことかな」


アグリが何気なく言った一言に、ハッとした。

普段から、ボクは村の事を一番に考えていたんだ。

だから、危険が迫った時に、とっさに後先考えずに行動したんだ。

それだけ、村の事を大事にしていたんだ。

空気のようにここにあることが当たり前だったけど、すごく大事にしていたんだ。

そう思ったら、今までのいろいろとした不満も、何故かすっと消えていったような気がした。


そんなことを考えているボクに、いたずらっ子のような笑顔でゾルダが近づいてきた。


「しかし、小娘の娘は魔物の下敷きになるのが好きよのぅ」


「なんでさー。

 ボクがいつ魔物の下敷きになったっていうのさー」


「あの時も、あの時もそうじゃ。

 小娘の娘は全部魔物に踏み倒されておるぞ」


「ぶぅーっ

 全部じゃないよー。

 確かにそうなった時もあったけどさー」


「今回もそうじゃが、たいした実力も無いのに本当に無茶をしよる」


「いいんだよー

 それで村が守れたのならねー」


改めて村の事が大事なのだと認識できたし……

母さんがいろいろと言ってきたことも、村を思っての事だったのだろうなー。

ボクがまだまだ子供だったってことかな。


そんなことを話しながら歩いていると、ボクの家に着いた。

だけど、やっぱりまだ中に入りづらい。

母さんの気持ちはわかったけど、飛び出していった手前なんだかはずかしい。


「アウラさんも心配しているから」


扉の前で二の足を踏んでいたけど……

アグリが一言声をかけてくれたことで、思い切ってかあさんのいる部屋にまで入っていった。

ただ入ったらいいけど、まだまともに母さんの顔は見れずにずっと下を向いていた。

ちらっと見た母さんの表情はどこかホッとした様子だった。


「アウラさん、申し訳ないです。

 フォルトナにケガを負わせてしまって。

 うまく助けられずに……」


「そんなことはないですわ、勇者様。

 あの子が無事だったのですから、お気になさらずに」


アグリも人がいいと言うか真面目と言うかなんだよなー。

ボクが無理しただけなのに、自分の所為みたいに言ってさー。


「そうじゃ、小娘の娘が勝手に行ったことじゃ。

 おぬしが謝らんでもいいのじゃ」


ゾルダはボクが思っていたことをさらっと言った。

でも他の人に言われるとなんだか悔しいなー。


「それはそうと……アウラさん、フォルトナのことなんだけど……」


「はい、なんでしょうか、勇者様」


「もし、アウラさんが問題ないようでしたら……

 またフォルトナと一緒に旅をさせていただけないでしょうか?」


アグリは何を唐突に言うのかなー。

そんなの母さんがイイっていう訳ないよー。


「あらあら。

 急に何でしょうか、勇者様は」


「フォルトナと話をしましたが……

 いろいろと上手くいかなくて自信を無くしているように思いました。

 ですから、ここらで長の代理をいったんお休みしてみてはと思って」


ボクの話を聞いてからいろいろとアグリは考えてくれていたのかもしれない。

ボクは愚痴程度にしか考えてなかったけど……


「私もだいぶ良くなってきましたので、そろそろ動かないと、とは思っていました。

 フォルトナ本人が行きたいと言うなら、別に構いませんよ」


意外にも母さんからはボク自身の判断するように言われた。


「ありがとうございます、アウラさん。

 フォルトナはどうする?」


アグリがボクに確認を求めてきんだけど、どうしようなー。

答えに戸惑っていると、ゾルダが


「のぅ、おぬし。

 ワシたちに何の相談も無しに決めるのかのぅ。

 ワシらの意見はどうでもいいのかのぅ」


ちょっと不機嫌な顔をしてアグリに文句を言ってきた。

ボクがついていくのは良く思ってないのかなー。


「ごめんごめん。

 何の相談も無しに話しちゃって。

 まずかったか?」


「……まずくはないがのぅ……

 まぁ、小娘の娘次第じゃ」


文句を言った割には、ボク次第という反応だった。

何が言いたかったのだろうなー。


「じゃあ、聞く必要なかったじゃん」


「そうであってもじゃなぁ。

 こういうのはきちんと確認したほうがよいぞ」


ゾルダは何の相談も無く話したことに不貞腐れていたのかなー。


「はいはい。

 次から気をつけるよ。

 先走ってごめん」


アグリ自身はたぶん良かれと思って言ったことなのだろうとは思う。

それだけボクの事を心配してくれているのだろうけどねー。


「で、そういうことなんだけど……

 どうする、フォルトナ?」


ちょっと前までのボクだったら、たぶんアグリの提案に乗っていたとは思うけど……


「ごめんねー。

 ボクはここに残る。

 やっぱり、この村のこと心配だからさー」


村がピンチになって、ボクの心の中が良く分かった気がする。

この村の事、やっぱり好きなんだと。

でも今のボクじゃ足りないところも多い。

それでもここを離れるのはちょっと違う気がした。

ここでもっともっと強くなって、勉強してこの村はボクが守らなきゃいけない。

そのためにも、ここに残って、母さんやカルムさんたちからいろいろと学ばなきゃいけないと思った。


「……そっか。

 なら仕方ないな」


アグリは特にそのことを聞き返すこともなく、すんなりとボクの答えを受け入れてくれた。


「ごめん……

 いろいろとボクの事心配してくれたのだろけどさー」


「いいよ、気にしなくて。

 フォルトナの中で結論が出ているなら、俺は何も言わないよ」


そんなボクたちのことを見つめている母さんは笑顔だったが、目からは一筋の涙が流れていた。


「母さん、ごめんなさい。

 いろいろと文句ばかりで。

 ボクはやっぱり、この村のためにいろいろとやっていきたい。

 母さんが安心して任せられるように」


「私もまだまだフォルトナには負けないわ。

 一緒に村を守っていきましょうね」


「うん」


ベッドに座っている母さんの胸に思いっきり飛び込んで抱きついた。

こんなにベッタリと母さんに引っ付くのも子供の時以来かもしれないなー。

仲直りしたボクと母さんを見て、自然と周りも笑顔になっていた。


――翌日


アグリたちは次の街へと旅立っていくとのことだった。

見送りに行くと、ゾルダがボクの耳元でささやいた。


「それだけの覚悟があるのじゃから、しっかりとやれよ。

 今度会う時は長たる自覚を持った小娘の娘であることを期待しておるぞ」


「うん、頑張るよー」


なんだかんだ言ってもゾルダもボクの事を気にかけてくれていたのかな。

最後に声かけてくれたことも……

さらっとやる気になる言葉をかけてくるところは、伊達に魔王をやっていた人じゃないねー。

ボクもゾルダのような上に立つ長にならないとねー。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ