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第108話 上に立つものは理性的でなければならんのじゃ ~ソフィアサイド~

なんとかことは収まったようじゃな。

マリーもセバスチャンのおかげか魔法だけでなく剣の腕もだいぶ上達しておるようじゃ。

まだまだワシには遠く及ばんがのぅ。


「マリーの活躍、見ていただけまして、ねえさま!」


「おっ……おぅ。

 見ておったぞ。

 なかなか様になっておったのぅ」


ワシの出番が少なくてブツブツと文句を言っていたことは黙っておこうかのぅ。


「ねえさまに褒められるのは嬉しいですわ!

 もっとおとうさまに鍛えていただこうかしら」


マリーはわざとワシの前でセバスチャンのことを『おとうさま』と言っておるな。

セバスチャンはこういうことには厳しいからのぅ。

魔人のような形相でこちらを見ておる。


「セバスチャン、まぁ、そんな顔しなくてもよいぞ。

 今は魔王でも何でもないからのぅ」


「ですが……」


「そんなことは気にせんでもよいわ。

 もう少しワシの前でも肩肘張らずに親子らしくしたらどうなのじゃ」


「お嬢様がそうおっしゃられるなら……」


マリーはいたずらっ子のような顔でセバスチャンに対して舌を出しておる。

そこまでふざけるのはどうなのかのぅとは思うが、マリーもマリーでいろいろとあるのじゃろう。


さてと……

そう言えば、小娘の娘はどうなったかのぅ。


「アグリ、小娘の娘の様子はどうじゃ?」


「もう目は覚ましているよ。

 ところどころケガもしていたけど、回復魔法である程度は治したよ」


「しかし、小娘の娘は無茶をしたのぅ。

 ワシらがいるじゃから、ワシらに助けを請えばよいものを」


横になって寝ておる小娘の娘に嫌味の一つも言ったのじゃが……

めずらしく真剣な表情をしておる。


「だってさー

 この村は……この村はボクが生まれ育った村だよ。

 ボクが守れなくてもどうするのさ」


「気持ちは分かるよ。

 たぶん、勝手に身体が動いちゃったんだろうね」


あやつは小娘の娘の気遣うような言葉をかける。

大切な何かが危ない時には確かにワシでもそう行動するかもしれんのぅ。

視線が自然とアグリの方向いてしまい、目があってしまった。


なんで、ワシはあやつの方を向いてしまったのじゃ。

そのこともあり、少し慌ててしまった。

それを悟られない様に、小娘の娘に問いはじめる。


「だからと言ってじゃのぅ。

 上に立つものとして、どれが最適なのかも導けんと、守れるものも守れんぞ」


そう言われると小娘の娘は表情が曇ってしまう。


「ゾルダらしからぬ説教だな」


薄ら笑いを浮かべたあやつがワシの方を見てきた。


「どこがじゃ。

 ワシだって魔族を束ねる王として、理性的に考えておったぞ」


その言葉にセバスチャンやマリーも唖然とした表情をしておる。

何故じゃ……

何故みんなそんな顔をしておるのじゃ。


「こっちの方が『どこがじゃ』だよ。

 おもいっきり感情で動いているじゃん、ゾルダは」


「そんなことはないのじゃ。

 それに……もしそうだったとしても魔王じゃなくなってからじゃ!

 魔王の時はきちんとしておったわ!」


「はいはい」


あやつはワシの言い分を半分も信じておらぬような返事をした。

マリーもセバスチャンも呆れたような顔つきでワシの方を見ておる。


「解せぬ!

 何でおぬしらはそんな顔でワシの事を見るのじゃ!

 ワシは十分理性的であるぞ」


「はいはい。

 そうだね、ゾルダはいろいろ考えて動いているよ」


またあやつは軽くあしらうような物言いをする。

ワシの事十分知らんじゃろうに……


そんなやりとりをしておると、小娘の娘は突然腹を抱えて笑い出した。


「あははははっー」


「小娘の娘もなんじゃ!」


「いや……フフフフ……

 ボクは……ハハハハ……

 ゾルダが理性的とかどうかじゃなくて……フフフフ……

 いつものアグリとゾルダだなと」


「いつものあやつとワシじゃと?」


「そうそう。

 どんな時もいつでも変わらないなーと。

 それだけ信頼しているんだろうけどねー」


なんだか小娘の娘に見透かされたような感じがしたのじゃ。


「そ……そんなことはないのじゃ。

 あやつとワシは、思惑が一致して行動を共にしておるだけじゃ。

 ほれ、おぬしも何か言うのじゃ」


そう言うと、慌ててあやつにも話をふったのじゃ。


「俺はゾルダのこと信用しているよ。

 強いし、頼りになるし。

 ここまでこれたのもゾルダのおかげだと思っている」


あやつがまともな答えを返すとは思わなかった。

なんだか、顔が火照ってくる。


「ふん……

 ワシばかりに頼られてものぅ」


「そうだね。

 そこは分かっている。

 だからこそ、ゾルダに頼らないように強くならなきゃと思っている」


その言葉を聞いて、頼られないのもちょっと寂しいと感じた。

ワシは何をそんなことを思っておるのじゃろう……

訳が分からなくなってきた。


「そ……そんなことはどうでもよくてじゃのぅ。

 ワシが小娘の娘に言いたいのはじゃな。

 弱い奴が上に立った時は、強い者を頼ってでも、守るのじゃ。

 一人でなんとかしようとするな」


「うん……

 わかったよー

 気をつけるよ」


小娘の娘はそう言うと起き上がった。

立ったと同時に少しふらついたので、あやつが肩を貸しておった。


小娘の娘の頑張りとマリーのおかげもあって、村人たちは数人のけが人が出た程度に収まったようじゃ。

あやつも小娘のお願いを無事達成と言うことじゃのぅ。

と言うことはじゃ……


「おぬし、ここに来る前に言ったことは覚えておるのぅ」


「ん?

 何のことだ?」


あやつはすっとぼけておる。


「忘れたとは言わさんぞ。

 酒じゃ酒。

 酒を飲ませてくれると言った、あれじゃ」


「あぁ、そんなこと言ったっけなぁ……

 でも、ゾルダは何もやってないじゃん」


そう言われると確かにそうじゃが……


「でも、約束は約束じゃぞ」


「えーっ

 今回頑張っていたのはマリーなんだから、マリーにじゃないの?」


マリーは頑張っていたのはわかるがのぅ。


「いやいや。

 マリーにやらせたのはワシじゃから、ワシもやったのと同じじゃ」


「やらせたのはセバスチャンだから……」


「そのセバスチャンに任せたのはワシじゃから……」


なんとか辿りついた理屈に、あやつは苦笑する。


「そこまでして酒を飲みたいのか!」


「あぁ、飲みたい!」


「ゾルダははっきりしててすがすがしいね!」


飲みたいものを飲んで何が悪いのじゃ。

ワシは酒を飲みたいのじゃ。

本当にあやつも意地が悪いのぅ……


――――――――


ん?

これで区切りがついたような感じじゃのぅ。

ってこれでワシの出番は終わりか?

ワシの活躍がまったくないではないか。

これではワシが酒を飲みたがるただの呑兵衛ではないか。


(いや、だってお前が出番増やせって)


この心に響く声は神か?

この世界の神か?

確かに出番を増やせとは言ったがのぅ……

これでは足りんのじゃ。

ワシの見事な立ち回りや戦いでの活躍、敵を圧倒して勝つといったことを望むのじゃ。


(それはこの先いくらでもあるだろうから……)


あるのじゃな、絶対にあるのじゃな。

約束じゃからのぅ。

もしなかったら、次こそはお前を倒すからのぅ。

覚悟しておくのじゃぞ!

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