表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
107/130

第106話 出番が少ないと言われても…… ~アグリサイド~

アウラさんにフォルトナのことを任された俺は、爆発音がした村の中心地に向かっていた。

ゾルダは酒で釣ったから、上機嫌である。

どんな奴がいるかはわからないけど、強力な魔族だったとしてもこれなら大丈夫かな。

いやいや……

俺が任されたんだから、出来る限り俺がなんとかしないと。


そんなことを考えながら向かっていると、不意に上機嫌だったゾルダの顔が曇り始めた。

何かブツブツと言い始めている。


「ゾルダ、急にどうした?」


「うむ……

 あのな、最近ワシの出番が少ないようなのじゃが……」


「はっ?

 いきなり何を言い始めているのか……」


出番ってなんだよ。

それをこの緊急事態に言いはじめるか、ゾルダは。


「だってのぅ。

 小娘の娘が中心だったり、おぬしが小娘と話したりでじゃ。

 ワシが目立っていないようなのじゃが……

 これは由々しき問題じゃ」


「ねえさまがおっしゃるのなら、マリーも言わせていただきます。

 マリーもほとんど出てないですわ。

 存在感がまるでないのですわ」


マリーもゾルダに乗っかり文句を言い始めた。


「あのさぁ……

 そんなことはどうでもいいんだよ。

 フォルトナを助けに行かないと」


「そうは言うが、これはワシにとってはあの小娘の娘より、大事なことじゃて……」


「マリーも大事ですわ!」


二人とも膨れっ面になって文句を言っている。

えっ、フォルトナよりそれが大事なの?

でもそれは森の中も全部装備の中に入っていたお前らが悪いとは思うんだけどな。

姿も現しもしないし、話もしなかったらそうなるとは思うんだけど……

そうは思ったものの、そんな話も出来る雰囲気になく


「凄い剣幕だな、二人して急に……

 というか、出番とかなんだよ。

 そういうメタなことを言われても困るよ!」


「またその『めた』と言う言葉を使っておるのぅ。

 ワシにわかる言葉を使うのじゃ」


「はいはい……

 とにかく俺にはどうすることも出来ないから、作者に言えって」


「作者とはなんじゃ……

 この世界にそんな奴はおるのか」


今日の二人は言えば言うほど突っかかってくるなぁ。


「あぁ、もう、面倒くさいなぁ……

 この世界を創っている神が決めていることだからさ。

 文句があるなら、そいつに言え。

 とにかく急ぐよ」


「そういう神がおるのじゃな……

 おい、神よ、聞いておるなら、ワシらの出番を増やすのじゃ」


「増やすのですわ」


二人は空に向かって大声で叫んでいた。

それで気が済むんならいいんだけど……


そして村の中心地についた俺たちに見えたのは必死に戦うフォルトナの姿だった。

魔物相手に戦っていたフォルトナだったが……

剣を振り回している男が子供を襲うところが見えたのか、その子をかばいに行ったようだった。

子供を助け出したまではよかったけど、魔物に押さえつけられてしまった。


「フォルトナ!

 今助けるからな!」


俺は押さえつけている魔物の脚へ攻撃すると、フォルトナを抱えて少し離れたところに寝かしつけた。


「なんだお前たちはー!

 お前たちも俺の邪魔をするのかー」


眼も虚ろな男が叫び始めた。


「いったい何をしているだ。

 魔物まで呼んで」


虚ろな眼の男に問いかけるも、錯乱しているのか、まともな答えが返ってこない。


「俺は……

 ここから消えて、神になるんだ……

 ここに居る奴らは、俺様と共に消えてなくなるんだー」


こいつは何を言っているんだ。

所謂無敵の人か。

何がそこまで追い詰めたのかはわからないけど……


「そんなことをしても何にもならないから、止めろって」


無理だとは思いつつ、説得しようと話しかけてはみたが……


「俺は神だー

 神に逆らうのかー

 さ……、逆らう奴は……こ……こいつが……すべて蹴散らすぞー」


やっぱり無駄だったか。

とにかくあの魔物と男をなんとかしないと。

そう思っていると、ゾルダが俺のところに近寄ってきた。


「のぅ、おぬし。

 あいつが、この世界の神とやらかのぅ?

 ワシらの出番を減らしておるのはあやつかのぅ」


ゾルダはまだその話題を引きずっているのか……


「また、その話?

 もうその話は終わったもんだと……

 あいつは、錯乱しているだけで、神じゃないよ」


「なんじゃ、つまらん。

 あいつがこの世界の神とやらならば、文句の一つも言ってやるのにのぅ」


関係ないとわかったゾルダは、男にも魔物にも興味が失せたようで……

近くにある建物の玄関先にどかっと座り込んでしまった。


「なんだよ、手伝ってくれるんじゃないのか?」


「ワシは興味はない。

 そうじゃのぅ……

 セバスチャン、お前に任せる」


「はっ、ありがとうございます。

 ですが、私ではなく、マリーの訓練にお願いできればと」


「うむ。

 差配も含めて、セバスチャンに任せるのじゃ」


「御意に」


二人で勝手に話を進めてしまい、マリーが倒すことになった。


「セバスチャン、俺は?」


「アグリ殿は……

 大変申し訳ございませんが、この子にやらせていただけないでしょうか。

 近頃はずっと訓練もサボっておりましたので……」


「はぁ……

 俺には理由もよくわからないですが、それでいいなら……」


「ありがとうございます、アグリ殿。

 ほれ、マリー、あなたがやるのですよ」


鋭い目つきをしたセバスチャンが、マリーに戦闘を促していた。


「なんで、マリーが……」


不満たらたらのマリーだったが、セバスチャンには逆らえないようで……

渋々魔物の前に向かっていた。


「マリー、わかってはいるとは思いますが……

 これは剣の訓練ですので、魔法は禁止です。

 剣のみで倒しなさい」


「……わかりましたわ」


そう言うと、マリーは剣を構えて、魔物と対峙し始めたのだった。


「……そう言えば、これだと次はマリーの出番が増えるのではないかのぅ。

 おい、この世界の神とやらよ、ワシの出番はどうなるのじゃ!」


「あの、ゾルダ……

 お前が興味失せたって言って、譲ったんじゃん。

 目立ちたかったら、お前がやればいいのに」


「……そ……そんなこともあったのぅ……

 ワシが譲ったこともこの世界の神とやらの仕業じゃ。

 だから、そいつに文句を言ったのじゃ」


「神の所為じゃなくて、ゾルダの所為な気がするんだけどな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ