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第99話 武闘大会 その4 ~ソフィアサイド~

「やるのぅ……

 なかなかと……

 ワクワクさせてくれる」


あやつもワシについてこれるようになってきたかと思うと自然と笑いが止まらないのぅ。


「さてと……

 これはついてこれるかのぅ」


その戦いぶりが嬉しくてついついスピードを上げてしまう。


「くぅっ……」


あやつは苦しみながらもワシになんとかついてこようとしておるようじゃ。

その中でもあやつはしつこくワシに聞いてきた。


「やっぱり、お前、ゾルダだろ」


「何度も何度もしつこいのぅ……

 私はソフィーナだ!」


正体を隠して武闘大会に参加してみておるのじゃが、あやつはワシとわかっているようじゃ。

しかし……そこは頑として認めんぞ。


この間のオムニスの件もそう。

メフィストの時もそう。

何せほぼほぼ戦っておらぬからのぅ。

ワシとしてはもう戦いたい欲でいっぱいじゃった。

だから、武闘大会をあのじじいに仕向けたのじゃ。

勇者の凱旋という餌で。

まぁ、半分はあやつのためでもあるのじゃが……


あとはあやつに内緒にことを運んで準備をしてきた。

まぁ、魔法は使えんので、全開とは言わんが、それでもヒリヒリする戦いが出来ると思ったのじゃが……


最初の相手……なんと言う奴じゃったかのぅ。

激戦地から来た、俺が勇者を倒すなどとほざいておったが、よく覚えておらん。

口の割には全然歯応えがなかったのぅ。

槍の動きは遅いわ、ちょっと小突いただけで吹っ飛ぶわで、準備運動にもならんかった。


次の相手も、その次の相手もじゃ。

人族と言うのはこんな弱いやつらばっかりじゃったかのぅ。


それに引き換え、あやつはやっぱり勇者と言われるだけの事はあるのじゃ。

まぁ、ワシが鍛えたのもあるし、セバスチャンの訓練のたまものでもあるがのぅ。

今までの奴らに比べたら、桁違いの歯応えじゃ。

これぐらいやれると、やっぱり楽しいのぅ。


「おぬし、なかなかやるようになったではないか」


周りの観客どもも大歓声でワシらの戦いを見てくれている。

こうやって注目されるのもまた楽しいし、やる気が出るのぅ。


しばらく楽しくてあやつとの駆け引き、競り合いをやっておったのじゃが……

あやつもしつこくくらいついてきおる。

そろそろこちらも一撃を入れんとのぅ。

楽しんでばかりもおれん。


慣れない剣を使っているせいもあると思うのじゃが、あやつが思いのほか、やりおる。

普段なら、こんな事せずに魔法なのじゃが、魔法は禁止されておるしのぅ。

どうあやつに一撃をくらわすか……


などといろいろ考えておったら、あやつがワシを押し込んでくるようになった。

剣技も上がってきておるようじゃ。

こういうところで慣れの差がでてくるのじゃろうな……


「ん……くっ……」


あやつはあまり考えている様子はなく、無心でこちらを攻め立てておるようじゃ。

集中しよるときのあやつは、いつも以上の力を発揮するのぅ。


あやつの冴えわたる剣に観客は大声援を送っておる。

まぁ、あやつが注目されておるのであれば、それはそれで良かろう。

この武闘大会をじじいに嗾けた意義があったのぅ。


しばらくすると、なんとか凌げてはおったが、ワシから攻めることが出来なくなってきた。

ギリギリのところでなのとかなっておるのじゃが……


「…………ワ、ワシが苦戦しておるじゃと……」


「…………」


あやつにはワシの声は聞こえていないようじゃ。

ますます苦境に立たされてきたようじゃ。


「まずい……」


一撃を貰いそうになったのじゃが、間一髪避けれた。

これは相当まずいのじゃ。

あやつに負けることなどあってはならん。

なんとしても勝たねば……

審判に見えないように魔法を使うかのぅ……

ワシが魔法を使えれば、あやつも大したことはないはずじゃ。


そんなことを考えておったのその瞬間にじゃ……

控室の方から大きな爆発音が聞こえてきた。


――ドカーン!


闘技場に煙が立ち込めはじめたのじゃ。


「キャーーーー」


「なんだ?」


「早く逃げろー」


闘技場の観客たちは慌てふためき、闘技場の入口に殺到しているのじゃ。


「ん?

 何がおきた?」


あやつもさすがに気になったのか、動きが止まったのじゃ。


「ラッキーじゃのぅ」


「なんか言ったか?

 ゾルダ」


「いいや、何も言っておらんぞ」


「ほら、ゾルダって認めたじゃん。

 お前、ゾルダだろ?」


「そんなことはどうでもいいのじゃ。

 まずはこの場をなんとかするのが勇者じゃろぅ」


あやつにそう伝えると、ワシは煙が上がっている控室の方に向かった。

そこには、セバスチャンとマリーも駆けつけていたのじゃ。


「セバスチャン、様子はどうじゃ」


「どうやら出場者の中に魔族が紛れ込んでいたようです」


「紛れ込んで何をしようとしていたのじゃ」


「まだそこまではわかりません。

 まずは、その魔族を捕まえないことには……」


セバスチャンは周りを警戒しながら、マリーと共に爆発が起きた控室に入っていった。

ワシもその後に続いた。


控室は爆発の衝撃で、方々で火の手が上がっておった。

そしてその中央には、背中に羽が生えた魔族が立っておった。


「なんで俺様が負けになっているんだ!

 あいつは審判が開始の合図をする前に突っ込んできたんだ!

 もう一度やり直しだ!」


癇癪を起したような態度で辺りに向かってフレイムをまき散らしておる。


「ふぅ……

 嫌だのぅ……

 結果を受け入れずに八つ当たりか」


その態度に呆れたワシは、そこにおる魔族に言葉を吐く。


「誰だ!

 このバルバロス様にそんなことを言うのは!」


バルバロスと名乗る魔族はワシの方を見やると……


「お前ー!

 お前のせいだぞ。

 この俺様が準備する前に仕掛けてきて。

 台無しじゃないか。

 決勝で勇者を殺すつもりだったのに」


「お前は……

 誰じゃった?」


覚えがないことで因縁つけられても困るのぅ。


「ねえさま……

 初戦であたった人ですよ」


マリーがワシの耳元でささやく。


「そうなのか……

 弱すぎて印象に残っておらんからのぅ」


「なんだと!」


わからんものはわからんのじゃが、ちょっと煽ってしまったかのぅ。


「ただ……

 決勝をぶち壊しにしてくれたことだけは、礼を言っておくぞ。

 何せあのまま続けられたらあやつに……

 いや、負けはしなかったじゃろうが……」


「何をごちゃごちゃと言っている!

 とにかくだ!

 俺様はもう怒ったぞ!

 このまま勇者を殺しに行く」


そう言うと、部屋から出ていこうとワシの目の前を通ってった。

ワシの事など見向きもしていないようじゃ。


「ワシから逃げる気かのぅ。

 いい根性をしておる」


ワシはその魔族の首根っこを捕まえると、そのまま引きずり、部屋の真ん中へと押し戻した。

その魔族は止められたことにさらに激怒した様子じゃった。


「俺様の邪魔をするのか!

 勇者を連れてこい!」


喚き散らすバルバロスとやら。


「いや、邪魔をしておるつもりはないのぅ。

 ワシがしっかり先ほどの礼をしてあげるからのぅ、そこに居るのじゃ」


「礼?

 なんのことだ?」


さてと……

まだまだワシは暴れ足りないのじゃからのぅ……

そこから出ていったら困るのじゃ。


「ねえさまの手を煩わせませんわ」


マリーも参加しようとしてくるのを手で押さえ


「ワシがやる。

 手出しは無用じゃ」


そう言うと、魔族に対して満面の笑みを見せ、前に立ちふさがったのじゃった。

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