#4 知恵と勇気と信じる心
「ウオオォォー!」
全力で雄叫びを上げて、大鬼の注目を
俺に向けさせる。
明と真吾は幼い姉妹と合流、真吾はすかさず
幼女を抱き上げ、明は少女と手を繋ぐ。
「行っけぇぇっ、直ぐ追いかける!」
逃走ルートは申し合わせている。
明と真吾は少女と幼女を連れて走って行く。
俺の方に大鬼がグッギァと怒りの声を上げて
迫って来やがる。
こんなバケモンについて来られたら
スーパースサの屋のシャッターなんか
簡単に壊されちまう。
ナニがなんでもココで撒かなきゃいけない。
「でっけえなぁ…でもやるしかねぇぞ。」
3〜4メートルあんじゃねぇの。
作戦は細かく区画整理されている小路に誘い
缶ジュースをばら撒いて転ばす。
転ばしたら区画の角々を曲がって撹乱して
逃げる。
俺らのホームグラウンド浅草6丁目、地の
利はコチラにある…だから…。
「うまく行きますように…」
独りつぶやき作戦開始だ。
「コッチだぁぁっ~でかブツ野郎っ!」
俺の雄叫びに反応して、グッギァと叫び返し
てくる大鬼。
俺は向かって来る大鬼を確認して急いで
路地の角を曲がり、次の路地の角に立つ。
「オラァ、コッチ来いや!」
「グッギャー、グオオォン」
俺の挑発に大鬼は反応して追ってくる。
ノッシノッシと緩慢に見える動きだが
一歩の幅が大きいから、以外に速い。
角々で挑発すること8回目で目的地に着く。
右側マンション、左側HOTEL相手の小道は
幅1·2メートル程の狭さで大鬼の体格だと
狭くて通りにくい!
なんでこんな小道が有るかと言うと、元々は
並行して民家が建ち並ぶ小路地だったからだ。
HOTELもマンションも新しく建てられ
た物で、建蔽率の問題で敷地一杯に作る事が
出来なかったからのこった小路地だ。
ここ数年、空前の観光客ブームでHOTELが
乱立、似たような小道はまだ幾つかある。
「オラァ、待ってやってるんだぜ!」
俺は挑発を更に浴びせ、覚悟を決めて
大鬼の接近を待つ。
大鬼はグギャーオと唸りながら体を
捻り、小道に入り込んできた。
狭い通路に見上げるしかない大鬼が横向きに
のっそりと大股で近づいてくる。
ニチャっとした笑みを浮かべた大鬼が
逃さないぞと俺に近づいて来る。
とんでもない圧迫感と恐怖に、今すぐに
でも缶ジュースを投げ出したい衝動で
バックバックと鼓動が速まる。
まだだ…遠い…もうちょい、今だァァァっ!
「オラァ、すっ転べぇぇ~っ。」
大鬼の踏み降ろす直前の足元へ、学生服に
包んでいた缶ジュースを勢い良くばら撒く。
同時に俺は後ろに飛び退き身構える。
「グオー、オッガァー?」
大鬼は左手を俺の方に伸ばしながら倒れ
こんできた。
デッカイ手がググーンと伸びてくる。
ヤバい掴まれる、俺はもう一度後ろに
飛び退く。
「あっぶねー、あとチョットで掴まれちゃ
うとこだった。」
俺は狭い道で倒れ、起き上がりにくい大鬼を
尻目に全力でその場から離脱する。
悔しがる様なグギィーと聞こえる唸り声は
遠ざかる。
大鬼は追って来ていない、やったぜ俺!
「無事でいてくれよ。」
明と真吾に幼き姉妹、無事でいてくれと
思いを呟いて走る走る。
途中、ゴブリン達に襲われている人が…無理だ。
「許してくれ…無理だ。」
誰彼構わず助けられる力なんて…無い。
無力さに泣きそうになるがそれどころでは
ない。
歯を食いしばって俺は走り続けた。
❀
「泣かないで、奴らに聴こえると見つか
るから。」
泣きじゃくる少女と小走りで走りながら
諭す明。
「怖かったよな…大丈夫、大丈夫だから
泣かないでほしい。
今から安全な場所に行くからね。」
おぶった幼女に優しく語りかける真吾。
「ぷっぐ…えっぐ…ぷっく…」
必死に泣くのを止めようとする幼女。
しっかり掴まっていてねと幼女に声を
掛け、真吾は明に行こうと促す。
「守がまだ来ないよ。」
5分ほどだけど、未だ守は現れない。
「守は必ず来る…俺達との約束を破った事
は一度もない…だから…だから行くぞ!」




