#3 また奴らが出てきたぞ!
宜しくお願い致します。
10月1日
出雲に集まった八百万の神々は
毎年恒例の宴を始めようとしていた。
「毎回毎回、料理に変わり映え無いから
ちょっとね~。」
ウズメがそう言うと、他の女神達も
「お供えが定番化しちゃってるからねぇ。」
と言い残念顔。
昔からの定番は農産物や海産物等、現代で
高級食材ばかりだがソレだけだと
飽きるものなのだ。
偶に和菓子に洋菓子などを信者が供え、受け
取った神がソレを宴で出すと女神達は大騒ぎ
になる。
勿論、男神達も内心は大喜びなのだが威厳を
保つ為にポーカーフェイスである。
1年に一度の宴に新メニューが出ると
場の盛り上がりはモリモリ盛り上がるのだ。
なにせ文化と言う物は、人間が
独自に創り出した物。
それ故にいくら神とはいえ、人間の創り
出した物を勝手にモノにしてはいけないと
ゆうルールがあるのだ。
だが1回でも供えられた物は無限に複製が
できるのである…供えられた神だけの特権。
今年、ウズメは御供えにフルーツ盛り沢山の
ゼリー5種類詰め合わせセットを手に入れて
意気揚々と新メニューを携えてきたのである!
仲の良い|アマちゃんに最初に食べて貰おうと
待ち構えていたのだった。
「あっ、アマちゃんコッチだよ〜。」
声をかけるとアマちゃんは弟のスサッチと一緒に
タヂの手を引いてコチラに
やって来る。
「遅れてすまんの〜、タヂが寝坊でなぁ。」
ほらっ、タジも謝るんじゃと言い、ふわりと
飛んでアマちゃんはタヂのモッサモサの頭を
ペンってヒトたたき。
「すまん…。」
口数の少ないタヂである。
アマに対しどう対応をすれば良いのか。
あの時から好意を寄せてくれるアマに胸が
ドキドキしてどうにもこうにもならない。
しかもここ近年、平成から令和にかけて
全員ではないが我々の姿が大きく変貌した。
今まで似たり寄ったりの姿形が大きく変わっ
たのだ。
人間達の想いの影響が原因である。
名の知れている女神達は肌の露出度が
高い、かなり高いのだ。
勿論、アマも露出度高めだ。
額の光輪は変わらずあるが…。
昔、アマは顔と手しか露出を
してなかった。
今では体型がはっきりとわかる、へそ
出しの服にピチッとした下履き
でキュッと締まった腰回りにぷるっとした
臀部が我が目を引いてどうにも
ならんのだ。
タジはムッツリであった…。
たが、いざと言う時は頼りになる男神である。
❀
神代の時代に我はタヂに
惚れたのじゃ。
天の岩戸から我を引き出す時のタヂの
困った表情が可愛かったのじゃ。
そして優しくだが抗え無い力に引き出され
ドキュンドキュンとトキメイて
しまったのじゃ。
しかも優しく抱き締められたのじゃ〜〜。
その日からタジがわれの心を
占領したんじゃ。
タジ以外の男神に触れられた事が無い故に
比べる事はできんがすごかったのじゃ!
タジのもりもり盛り上がった胸にそっと
押し付けられる様に抱きしめられた時の
安心感は天の岩戸に閉じこもるより…いや、
比べられん程の安心感じゃった。
アノ手コノ手でタヂにアピールしてるが…
中々進展が無い…。
弟スサッチに手厳しい事を言われた。
「姉ちゃん、弟の俺が言うのもナンだけど
もっと強引に行ったほうが良くないか。」
このままじゃタヂの奴は行動を起さないぞっ
とスサッチがごちる。
我だって頑張っているのじゃ!
手を繋いだり、隣に寄り添ったりと必死に
アピールしているのに、あ奴は顔を
赤くしてソッポを向いたり下を向いたりと
逃げ腰で…でもそこが可愛かったり
するんじゃよ!?
だが今回は秘策があるのじゃ!
「食べる事が大好きなタヂの胃袋を掴もう
大作戦なのじゃ!」
ついこの間、椀に入った生卵に醤油
炊き立ての白米が木椀に盛られ、ホカホカと
湯気を上げる味噌汁に大根、胡瓜、人参の
糠漬けが並ぶ膳が我の祭壇に供えられた。
生卵は初めて供えられた。
いつもは野菜の煮つけか焼魚なのじゃが
コレはどの様に食すのじゃ?
思案しておると
暫し供えた膳を下げられてソレを信者が
御下がり膳として食す。
観察して食し方がわかったのじゃ。
ではさっそく先程の膳を出してみる。
「この角にコッンと当ててこうやって…。」
上手に空の椀にとるんと入った生卵を箸で
軽くかき混ぜ、醤油をチョロリ、チョロリと
掛けて…うん、こんなもんだったはずじゃ。
「ホカホカの白米にとろりと掛けて…」
まぜまぜして、いざ実食じゃ!
「フングゥゥフングゥゥうみゃいぃぃ〜。」
醤油の風味が生卵の生臭さを消しておるし
濃厚な黄身の旨味に醤油の塩味が白米の
甘みとガッチリあっておるぞ。
合間に食す糠漬けとチビリと啜る味噌汁が
食欲を増進させるのじゃった。
気がつけば何杯食べたかわからんほどじゃ。
ポンポコリンになった腹をさすり、我は
確信した。
「勝つる、勝つるぞ、これでタジの心は
我のものじゃぁぁ〜げふぅ〜。」
❀
「ウンまぁァァァいィィ!!」
「そうかそうか、旨いかタジよ。」
採寸を5倍程に大きく再現した卵かけご飯膳。
フッハフッハ、アグアグ、パリパリ、
ジュビっと無我夢中に食べまくるタジ。
我はせっせと次の卵かけご飯膳を用意する。
こんなやり取りを生暖かく見守る八百万の
神々だったが、我慢しきれずに声を掛ける。
「アマちゃん、そろそろ皆にも振る舞っ
た方が…」
ウズメが苦笑いしながら声を掛けて
きよった。
「うむ、待たせてすまんのじゃ。」
我は皆の手元に卵かけご飯膳を顕現させる。
勿論、採寸は5倍にしておる。
元の採寸ではお替りが間に合わんからのぉ。
「「「「ムホ〜こりゃ美味い!」」」」
そう言って男神達は凄い勢いでがっつく。
「「「「うんみゃいぃぃ〜!」」」」
女神達も大絶賛でハグハグとがっつく。
2膳、3膳とお替りを続ける八百万の神々。
タジに七膳めのお替り膳を
出した時じゃった。
皆の動きが止まる。
「また奴らが出てきたぞ…」
箸を止めて忌々し奴らだとゴチるタジ。
「今回は随分と久しいのう。」
腹立だしげに言い捨てるアマ。
八百万の神々の目が下界を見つめる。
これからも宜しくお願い致します。