依頼がこない七日目
「ここんとこ毎日来るけど、実家に帰らなくていいの?」ミンチは二人に言った。
「うちとこは大丈夫です」Qちゃんが答えた。
「僕も平気っす」ナナ氏は言った。「それより、一週間っすよね。便利屋を開業してから、お客さんが来る気配が無いっすけど、大丈夫っすか?」
「まぁ、なんとかはなってる」ミンチは答えた。大体は予想通りだ。ただ、一ヵ月後も依頼がこないとなると、流石に焦って来るだろうけど。今の所は宣伝活動を続けるしかない。
「僕のバイトの方が稼いでるんじゃないっすか?」
「そうだろうね」
「飲食店やったっけ?」Qちゃんはナナ氏にきいた。
「塾の講師っすよ」
「そやった。ニアピンや」
「全然違うっす。Qちゃんはバイトしないんすか?」
「する気ないよ。うち、バイトって肌に合わんっていうか、向いてないんよね」
「やったことないっすよね?」
「ない」
「仕送りあるんだからいいっすよね」
「そりゃそうよ。働かずして食うが至高。うちの格言よ」
「バカみたいなこと言って恥ずかしくないんすか?」
「全然。働かな生活出来ん社会が間違っとる。一生、家でダラダラしてたいし、猫と小判が欲しい」
「豚と真珠だったらあげるっすよ」
「どっちもいらんな。真珠って数が少ないだけで、そんなに綺麗なもんちゃうよ」
「小判なんかどうするんすか?」
「そら、売るしかないよ」
「真珠も売ったらいいじゃないっすか?」
「そうやな。売ってもいい。でも、豚なんか貰ってもよう捌かんわ」
「他にないんすか?」
「なにが?」
「バカみないな格言」
「バカじゃないわ。世界の真理よ。えっと、まだまだ、あるで。ベッドの上に三年」
「ちょっとエッチじゃないっすか?」
「アホ。なに想像しとんや。グータラしとるってことや」
「他は?」
「目くそは鼻くそを笑う権利がある」
「なんでっすか?」
「目くそは涙になれんかった残り物やけど、鼻くそは鼻水が固まったやつやからな。雲泥の差よ」
「汚いっすよ」
「しゃーない。この世の真理やから。あとは、自分に合った枕はどこにもない。もう一つは、自分に合った枕がなくても寝れる」
「働かないでそんなことばっかり考えてるんすか?」
「貴族の血が流れとるんよ。お上品やろ」
「誰がっすか?」
「うちやて」
「常に盲目っすね」