依頼がこない十七日目 5
「誰だ?テメェ?」御堂筋がソファから立ち上がった。
「誰だっていい。話がしたい」ミンチは言った。
「はぁ?」御堂筋は、眉間に皺を寄せたまま、近付いてきた。
「話がしたい。座れ」ミンチは言った。
「どうやってここに入った?」
「座れ。話してやるから」
御堂筋は殴りかかって来た。
後方に下がって躱す。
もう一発殴って来た。
それも、同じやり方で躱す。
御堂筋は、拳が当たらなくて、面食らっているようだ。彼は蹴る動作に入った。大振りなので後ろに下がって躱すのは容易いが、壁があり、これ以上は下がれない。
踵で踏み込んで、一気に間合いを詰める。蹴りは食らったが、太腿部分が当たっただけだ。詰めた勢いのまま、御堂筋を突き飛ばした。彼は片足が上がっていた為、後方に吹き飛んだ。
地面に倒れ込んだ彼は、素早く立ち上がろうとする。ミンチはソファを指さした。
「庭に警察がいる事に、気付かなかったのか?」ミンチはハッタリを言った。「合図があれば、直ぐに突入する。わかったら座れ」
「テメェ」御堂筋は敵意剥き出しで、立ち上がった。聞こえていないようだ。
「山内を殺したのは、お前だろ?なんで、殺した?」
御堂筋は無視して襲い掛かって来た。
舌打ち。
御堂筋の腕を掴み、力を利用して地面に投げた。うつ伏せにしたまま、押さえつける。
「話も出来ないのか?」ミンチは押さえつけたまま言う。
御堂筋は体に力を入れているので、押さえ付けるのに苦労する。肘の関節をきめる。
御堂筋の呻き声。
その時、近くで気配がした。
人が立っている。
誰?
そいつが接近する。
手に光る物が。
更に、接近。
ミンチは躱そうと跳んだ。
……。
躱す為に、後方に跳んだミンチは見た。
ナイフを持っている人物。
そのナイフには、血が付いている。
赤い水滴が地面に滴る。
体からは、血が流れる。
静かに、流れる。
ナイフを持った女は、また、刺した。
呻き声。
刺された箇所から血が溢れる。
ミンチの体は固まって、動けなかった。
体から血が溢れる。
今度は勢いよく血が飛び散る。
その血を、女は浴びた。
ミンチも浴びた。
呻き声。
女は、もう一度、刺した。
鋭い瞳。
冷たい瞳。
部屋は静かになった。
女の乱れた呼吸の音だけがする。
何も動いていない。
ナイフから滴り落ちる血液以外は。
「何やってるの?美月」ミンチは、ナイフを持った女に言った。




