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便利屋に依頼がこない  作者: ニシロ ハチ
35/56

依頼がこない十五日目 1

 ミンチは目覚めた。

 結局、昨日は美月を見つけられなかった。彼女は家に帰らず、どこかへ出かけたままだ。ニュースをチェックして、物騒なものは見つからなかったのが救いだ。ヒカリのご飯を用意する必要もあり、捜索は諦めて帰ったミンチだった。

 眠っているヒカリを起こさない様に布団を畳み、コーヒーを淹れた。椅子に座ってコーヒーを飲んでいると、ドアがノックされた。玄関のドアだ。インターフォンがあるのに、ノックをされるのが不自然だ。ヒカリを起こすか迷ったが、先に足音を消して覗き穴から外を伺った。

 ドアの外には美月が立っていた。ミンチは驚き、鍵を開けて彼女を招いた。彼女は静かに部屋の中に入る。衣服が汚れてはいない。でも、髪は少し乱れていた。

「どこに行ってたの?」ミンチはドアを閉めてから言った。

「先にシャワ―浴びたい」彼女は冷たい目で言った。

 言いたい事は沢山あったが、それはシャワーを浴びた後でも構わない。美月がシャワーを浴びるのを、コーヒーを飲みながら待った。こうやって待つのは久しぶりだ。

 浴室から出た彼女は、ラフな服を着て、ミンチの対面に座った。髪はタオルで拭いただけで、完璧には乾かさないみたいだ。ヒカリを起こさない配慮だろう。

「お腹は空いてる?」ミンチはきいた。

「ちょっと。でも、ヒカリが起きてから一緒に食べる」美月は穏やかに眠っているヒカリを横目で見た。

「どこに行ってたの?」

「色々と」

「勝手に出て行くのは、危ないと思う」

「ここにいる事を強制されているわけじゃないし」

「でも、外よりは安全だ」

「御堂筋を捕まえられるかもしれない」彼女は話を切り替えた。

「…どうやって?」叱ろうかと思ったが、そんな関係性でもない。

「あいつが現れる場所がある。そこで待ち伏せていたらいい」

「どこ?」

「まだわからない」

「どういうこと?」

「複雑ってこと」

「どうやってそれを知ったの?」

「調べた。自分の足で」

「もし、現れる場所が決まっているなら、警察に張って貰えばいい。捜査状況はわからないけど、御堂筋を怪しんでいるなら、それくらいの人員を配備するはずだから」

「警察なんて駄目。信用できない」

「それじゃ、どうするの?」

「私たちで捕まえる」

「私たちって?」

「私とミンチ」

「どうしてそんな危険な目にあう必要があるの?」

「それが一番確実だから」

「そうは思えない」

「それに、確実に現れるかどうかはわからない。十パーセントくらいだから」

「もっと詳しく教えてくれないと、賛同するわけにはいかない」

「でも、これ以上は言えない。今は言えないわけじゃなく、わからない」

「だったらどうする事も出来ない」

「御堂筋を無力にする方法を考えといて。縛ったり押さえつけたりする方法」

「場所もわからないし、何人で来るかもわからないから、何も考えられない」

「それでも、考えといて。この事は、ヒカリには内緒」彼女はヒカリを見た。

 ヒカリは規則正しい寝息をたてている。

「断ったら?」ミンチはきいた。

「ここを出て行く。もっと頼りになる人がいるだろうし」

 それでも構わない、と言いかけて、何とか堪えた。

「わかった。出来る限り協力する。だから、勝手には出て行かないで欲しい」

「うん。協力するならそうする。一つだけわかっているのは、御堂筋には女がいる。そいつに会う為に現れるかもしれないってこと」


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