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便利屋に依頼がこない  作者: ニシロ ハチ
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依頼がこない三日目

「全然ダメでしたね」ナナ氏が椅子を回転させながら言った。

「そんな気はしてたけど」ミンチは一人掛けのソファに座ったまま答える。

「内容自体は悪くないと思うっすけど」

「そうか?」


 昨日、便利屋のアカウントの運用をナナ氏に任せてみた。ナナ氏の呟きは『便利屋開業中です 依頼待ってます。 人が足りない時はぜひ 心霊スポットにも同行します』と『買い物の荷物持ちもします』の二つだ。


「心霊スポットにも同行しますってあるけど、これって僕が行くんだよね」ミンチは言った。

「そりゃ、そうですよ。ミンチさんの便利屋なんですから」

「それは困るな」

「あれっ?心霊系が苦手っすか?」

「いや、そうじゃない。信じてないからリアクションもしないし、散歩と変わらないし」

「じゃ、いいじゃないですか。まずは、どんな仕事をしているのかを知って貰おうとおもったんすけど、その前に問題がありました」ナナ氏は椅子の上で胡坐をかいた。「だーれも見てないっす。宣伝のせの字にもなってないっす」

「そうだね」

「だから、フォロワを増やす事から始めないと。ある程度、認知されてから、どんな仕事を受け入れているのかを言わないと、意味がないです」

「そうだね」

「だから、フォロワ獲得の為に、インテリジェントで目を引く、突飛なツイートが必要っす」

「そうだね」

「でも、僕、Twitterしたことないから、わかんないすけど」

「ダメじゃん」

「だって、僕って、もっと、個というか、我というか、そっち系で、音楽の趣味も友達と合った事が一度もないですし。でも、なんというか、大衆にチューニングを合わせればいいんすよ。周りに合わせてなかっただけで、合わせらえないわけじゃないんで。だから、えっと」ナナ氏は顔を上げて天井を見上げた。

「だから、キャラ付けすればいいんじゃないすか?」ナナ氏は頷いている。

「どんな?」

「えっと、例えば、武士とか」

「絶対、違うと思う」

「そすか?」

「便利屋なのに武士のキャラ付けしてたら、変じゃない?」

「見る人が見たらそうかもしれないっすね」

「見た人全員がそう思う。でも、誰も見ないのが、もっと問題だ」

「えっと、じゃ、ほっこりエピソードとかないすか?道の真ん中で車に引かれそうな子猫を、寡黙そうなおじさんが走って助けていたとか」

「ほっこりかな?それ」

「ハンバーガをトンビに盗られたとか」

「どこにほっこりがあった?」

「じゃ、あるあるとかどうすか?百均の乾電池って直ぐに消耗するから、取り換える手間を考えたら安くないとか」

「それ見て依頼したいと思うかな?」

「まずは、認知される事から始めた方がいいっすよ。あと、このあるあるを武士になりきって呟けば、絶対いいっす」

「それは、絶対ない。あと、百均の乾電池の消耗って、他のよりも早いの?」

「さぁ。でも、電池が切れた時に、百均だからすぐに消えたんだって思わせる能力を持ってますよね。それが安い宿命というか、他の数百円のものよりも、出来が良くても、そう思われないのが悲しいっす。あっ、だから、パンを落とした時に、バターを塗った面が床に落ちる確率は、カーペットの値段に比例するのと同じで、乾電池は切れた時に、値段に反比例して長くもたなかったな、と思うんす。えっと、だから、『乾電池の値段の違いは、電池が切れた時に満足出来るかどうか。高い乾電池を買う理由は、いざという時に、役に立たなくても諦められるから』っていうのはどうすか?」

「いいんじゃない」

「あと、『武士道とは死ぬこと見つけたり』ってのも一緒に沿えたら絶対いいっす」

「だから、絶対ないって」ミンチは笑ってしまった。


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