表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
便利屋に依頼がこない  作者: ニシロ ハチ
22/56

依頼がこない十日目 2

 買い物帰りに気配を感じて振り返ると、Qちゃんがいた。

「やっぱりミンチさんやん。今から家に行こうと思ってたんですよ」Qちゃんは笑顔で駆け寄って来た。

「今から?」

「なんかマズいですか?」横に並んだQちゃんは、顔を覗いてきた。

「いや」ミンチは言葉を濁した。もう夕方である。

「大学は終わり?」ミンチはきいた。

「終わりです」

「ナナ氏は?」

「部活やと思います」

「部活?なんの?」

「演劇部か茶道部か弓道部かのどれかです」

「そんなにやってたんだ」ミンチは意外だった。

「どれかは辞めたかもしれませんけど。あの子、いっぱい勧誘されて、断らんかったから」

「Qちゃんは部活をやってないの?」

「うちはギターサークルに所属してますけど、飲み会にしか参加しません。他の大学と一緒に飲む時に、女の子はタダで飲み食い出来るんですよ」

「へぇ」

「あと、演劇部にも一応所属してますが、新歓の飲み会以外に顔を出してないです」

「飲み会が好きなの?」

「そんな事もないですけど。ただ、ちやほやされるのは、悪い気はしないですね。それよりも、タダなんが良いです。うち麻雀が出来るんで、先輩に呼ばれて麻雀した時も、ご飯出てきますし。それに、うち、結構麻雀が得意なんです。だから、それで儲けてしまって、バイトなんか必要ないんです。先輩も負けるとわかってても、女の子がいた方が楽しいから、呼んでくれますし。まさに、鴨がネギをしょってきたって感じです」

「麻雀が出来るんだ。僕も出来るよ。最近はあんまりやってないけど」

「ホンマですか?ナナ氏も出来るんで、あと一人いたら、面子が揃いますね」

「うん。ただ、麻雀牌がないから、持っている人を探さないといけないけど」

「絶対やりましょうよ。うち楽しみです」Qは楽しそうに言った。

「もしかして、勝つ気でいる?」

「はい」Qちゃんは、蛙の子どもはオタマジャクシか、という問いに答えるかのように、返事をした。

 ミンチは突然、振り返る。後方五十メートル程の所に、男がいる。さっきも、いたので同じ方向なのだろうか?それとも…。

 ミンチはポケットの中で、携帯端末のタイマをセットした。画面を見ないでも操作出来る様に、準備をして、練習もしていたから簡単だった。十秒後にタイマが鳴った。それは、着信音と同じ音に設定してある。

「ちょっとごめん」ミンチはそう言って、Qちゃんから離れた。そして、小声で会話をしている振りをする。少ししてから、電話を切る振りをした。Qちゃんを見ると、携帯端末をいじっていた。

「ごめん。この後、用事が出来た」ミンチは追いついて言った。

「…そうですか。それは残念です」

「うん。あと、ちょっと、しばらく、家を留守にする事が多くなるから、今までみたいに突然来られても、会えない可能性がある。だから、来る前に連絡して貰えると助かる」

「わかりました」返事だけして、Qちゃんは一緒に付いてくる。

 しばらく沈黙のまま、並んで歩いた。こちらとしては別れの挨拶をしたつもりだったのだが。

「あの、ミンチさん。なんか、隠し事してませんか?」Qちゃんは心配そうな顔をしてきいてきた。

「隠し事なら、幾つもあるけど」

「最近、女の子の誘拐っていう怖い事件も聞きますし」

「えっ?」ミンチは思わず声に出た。Qちゃんは、それを見逃さずに、ジッと睨んでくる。

「なにか、見た?」ミンチはきいた。

 Qちゃんは、コクリと頷いた。

 トイレに行ってから、Qちゃんの顔は曇っている様に見えた。もしかして、ヒカリを見たのだろうか?

「なにを?」ミンチは一応、探りを入れる。ここで墓穴を掘るわけにはいかないからだ。

「女の子」Qちゃん言った。

「うん。実は、親戚の子なんだ」ミンチは言った。

「親戚の子を浴室に隠すんですか?」

「かくれんぼをしている最中に、二人が来た。それで、二人の相手をしてたら、うっかり忘れていて」

「靴も鞄も一緒に浴室にありました。かくれんぼするのに、靴まで隠す必要ないはずです」

 Qちゃんは、ガサツっぽく見えるが、頭は良く細かい所まで見ていたりする。

「……。うん。ごめん。それは嘘だ」ミンチは溜息をついた。「ちょっと、訳ありの子なんだ。あの子がうちにいる事を、誰かにバレたら、あの子が困る事になる。だから、二人には隠していた。二人を信用していないわけじゃなくて、巻き込みたくなかったからだ。これは、信じて欲しいんだけど、僕が誘拐したわけじゃない。それなら、二人が来た時に、居留守を使っている」

「ホンマですか?」

「うん。これはホント」

「今もその子は家にいますか?」

「いるよ」

「会ってもいいですか?」

「今日は、ちょっと良くない。仕事があるから。また、今度なら、いつでも」

「わかりました。もしかして、その子って、便利屋の仕事関係ですか?」

「似た様なものかも」

 Qちゃんとは、曲がり角で別れた。

 少ししてから、振り返ると、男は五十メートル程後ろについて来ていた。つけられているのは自分だと、確信したミンチだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ